【ハイキュー!!】happy ignorance R18
第4章 Seeing is believing
「蛍くんはショートケーキだよね?」
綺麗に片付いたリビングに通され、ダイニングに席を勧められた後に、和奏がこちらにケーキの箱を掲げてそう聞いた。
あんまりキョロキョロ見渡しては失礼になる…と思いながらも、家の様子を観察していた僕は、慌てて頷いた。
以前、ショートケーキが好きだと話したのを覚えてくれているらしい。
カウンターキッチンの奥からコーヒーのいい香りが漂っている。
本人に気付かれないように、それでもしっかりと和奏の姿を見て、改めて幸せを噛みしめる。
このまま時間が止まってもかまわないような気さえする。
僕らしくもないバカみたいな考えに笑えてくる。
「ケーキ、1人2つずつ食べちゃう?」
太っちゃうかなぁ?と可笑しそうに笑う和奏の様子に、和奏ならもっと太っても可愛いのに…とかバカな考えは継続中だ。
「あとはご両親に…と思ったんだけど…。」
僕の言葉に和奏がキョトンと目を見開く。
「あれ?私の両親…母が父の単身赴任について行ってて、ほとんど帰ってこないって…話してなかったっけ?」
初耳だ。
和奏の様子から察するに、本当に伝えたつもりだったようだ。
僕としては、高校1年生の彼女がこの家で一人暮らしのような状態だと言うのは、結構衝撃的だった。
でも、彼女にとっては当たり前の事で…今更過ぎるのか、特にそれについて感想を求めている様子でもないので、下手な感想は僕の中だけにしまっておく事にした。
「そうだったんだ。じゃあ、4つは買い過ぎだね。」
「あっ、でも貰っていいなら、夜に徹が夕食食べに来ると思うから…。」
和奏が湯気の上がるカップを両手に近付いて来た。
及川さんが…夕食を食べにね…。
両親がほとんど家にいないと告げた時と同じような口振りから、彼女にとっては当たり前の事なのだろうとわかる。
そう言われると…今の今まで気にもしなかったけど、棚には和奏と及川さんのツーショット写真がたくさん並んでいる。
小さな頃から最近のものまで。
「あの…蛍君もよかったら夕食食べていかない…かな?大したもの作れないし…お家で用意してたら…あれだけど。」
思わず黙り込んだ僕に、何を思ったのか和奏が慌てた様子でそう付け加えた。