【ハイキュー!!】happy ignorance R18
第4章 Seeing is believing
幼馴染と比べると…僕が和奏の事をよく知らないのなんて…当たり前だ。
試合の日から、今日まで何度も考えた…誰に向けた物かもわからない言い訳が再び頭を掠めた。
【皐月】
くだらない事ばっかり考えながら歩いていた僕の視界に、急に見慣れた名前が飛び込んできた。
「あっ、ここか。」
慌てて足を止め、和奏から聞いた住所と、目の前の表札を見比べて、ここが和奏の家だと確認する。
本来であれば、今日はこんな気分じゃなかったはずだ。
和奏の家にお邪魔して、一緒に勉強をする。
部活では西谷さんが戻ってきたり…何かと騒がしいけど、和奏との約束は変更にも、キャンセルにもならずに今日まで楽しみにしていた。
そして…今日は僕の思いを和奏に伝える。
例え、厄介そうな幼馴染の存在がわかったからって、その計画を変更する必要はない。
いや、むしろ及川さんの存在のせいで、焦る気持ちが強くなっている気がする。
ふーっと、今度は溜息ではなく深呼吸のために息を吐き、インターホンのボタンを押す。
ピンポーンと聞きなれた音がした。
インターホンには何の応答もないが、中からバタバタと気配がして、和奏がドアを開けて顔を覗かせた。
「蛍君!待ってたよ。迷わなかった?」
そんなに長い距離を走ったわけでもないだろうに、少し息が上がった和奏が上目遣いでこちらを見ている。
しかも、普段は見慣れない私服姿だ。
…不意打ちに可愛いとか、ズルいんですけど。
ってか、まずはインターホンにちゃんと出なよ。
僕じゃなかったら、どうするんだよ。
和奏は本当に自分が可愛すぎるって自覚が全然ないんだから…。
言いたい事は山ほどあったけど、和奏本人に伝えたらどう思われるか…ちょっとだけ想像してやめた。
「別に。迷わなかったよ。これ…ケーキ買ってきたから。」
ケーキの箱を受け取った和奏の顔が、わーっと言う反応と一緒に綻ぶ様子に、僕まで笑顔になる。
さっきまで気になって仕方なかった幼馴染の事なんて、今は思い出しもしなかった。