【ハイキュー!!】happy ignorance R18
第2章 what is lost is lost
「影山、顔怖ぇよ。」
横を歩いていた日向が言う。
「うるせぇ。日向ボゲェ。」
「なっ、今の完全に八つ当たりだろ!でも、確かにあれは羨ましいよなぁ。俺も皐月さん好きだから、気持ちはわかるけどよ…。めっちゃ妬けるよな。」
あー、もう腹減った。我慢出来ねぇ。と、鞄を漁りパンを探している日向を見下ろす。
は?
俺も??
気持ちはわかる??
…妬ける??
俺が…?
「俺が皐月の事好きみたいに言ってんじゃねぇ。」
「え…?だって、そうだろ?」
キョトンとこちらを見てくる日向と目が合って、心臓がドクリと大きく跳ねたのを感じた。
俺が…皐月の事を好き…だと?
そう考えれば、パズルのピースのように気持ちがぴったりとはまる。
出会った時に感じた…何年も経つのに忘れられない、あの時の何とも言えない感情とか。
及川さんと付き合ってると知った時の…それとか。
コートの外で見守る皐月に、少しでも良いところを見せたいと思ってしまう事とか。
中学でバレーが辛くなった時に「それでも影山君はバレーを辞めたりしないでしょ?」って笑う皐月の笑顔を見た時の気持ちとか。
俺が名前を付けずに逃げてきた物が全て…皐月に対する恋心だったとしたら…。
もう一度、前を歩く皐月に目を向ける。
月島が頭を撫でるところで、見た事ないような笑顔でそれに応える皐月。
くそ…。
その笑顔を自分に向けて欲しい。
月島…だけじゃない。
及川さんにも勝たないといけない。
それでも皐月が欲しい。
俺…こんなにも皐月の事が好きだったのか。