【ハイキュー!!】happy ignorance R18
第2章 what is lost is lost
side 月島 蛍
「朝練…途中から見掛けなかったけど、どこ行ってたの?」
前を歩く和奏に追いついて声をかける。
「あっ、蛍君お疲れ様ー。」
髪の毛をなびかせてくるっと振り向く様子は、絵画か何かのように綺麗だ。
「僕の質問の答えになってないんだけど。和奏が練習抜けてるなんて…まさか、体調悪いんじゃないだろうね?」
えへへ。と笑う様子は、僕の予想が図星だと書いてある。
やっぱり。
朝からいつもと様子が違うと思ってた。
体調不良で上気した様子の和奏を思い出して、胸のあたりがギュっと締め付けられるのを感じた。
「ちょっと…辛かったんだけど、もう大丈夫。菅原先輩に助けて貰っちゃった。」
そういう和奏は確かに顔色も良くなっていて…。
菅原さん?
そういえば、日直だからって朝練を先に抜けていたな。
何か…薬でも貰ったんだろうか。
和奏が元気になったことは喜ばしいのに、和奏が、一番に頼ったのが僕じゃなかったという、それだけの事で少し気落ちしている。
だいたい、和奏は思わせぶりなのだ。
入学式の日に、和奏が山口を下の名前で呼んだら嫌だと思っていたけど…山口どころか、他のクラスメイト、排球部人達も、僕以外は全員苗字で呼んでいる。
自分の下の名前を呼ぶ事を許しているのも僕だけのようだ。
「和奏」
「蛍君」
そう呼び合う事で、僕の密かな独占欲は満たされる。