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lovesong birds【短編集】

第8章 板の上の魔物[簓]




ささらくんの手を握ったまま、私は動画を見ることを続行していた。他に、することが無くて。

でも、なんとかオンデマンドのは大体見終わってしまったので、ささらくんの漫才でも見ようかと違うサイトに移動。

んへへ、ふひひ、とまたきしょい笑い方なってしまった。おっきい声で笑いだしそうになってしまうのを押えてるからかな。ささらくんを起こさないようにしんとやから。


何本か漫才をみて、なんとなく白膠木簓が躑躅森盧笙と組んでた時のも見始めたくらいの時、握っていた手がそろっと動いて、離れていった。


「ささらくん、起こしてしまった?」
「……な、んでそんななづかじいの、みてんの?」
「えと…」
「…若手ん頃とか、むっちゃはずいやん。おれ、ぴちぴちやん。まぁ、今もお肌ピチピチやけど。」

熱が少し下がったのか、さっきより大分普通の彼の喋り方に戻ってる。普通の会話でもめっちゃウケ狙ってくる喋り方。彼の前では、あんまり躑躅森さんのこと触れんでおこうと思ってたのに、どうしよう。


「だって…すきや、し。」

勝手に焦りまくった私は、そんな少女漫画の告白みたいなこと言ってしまった。

「少女漫画の告白か。」

脳内と同じツッコミされた。


「そ、それはいーやん!それより、熱!」
「あー、おん。」

半ば強引に話題を変えた。
我ながらめちゃくちゃ下手くそだ。


「もーだいぶ楽…ていうかつむぎいつ来たん?」
「わ、この流れ2回目」
「まじで」

なんも記憶ないわぁって、ささらくんは起こした背をまたベッドに逆戻りさせた。

「さっきうどん作ったけど起きんかったから食べちった。」
「えー病人の家で普通に食事してる。」
「ついでにプリンも。」
「デザートまでいただいてしまってるやん。」

いつものささらくんに、少しだけほっとした。


「みかんゼリーで許してよ。」
「うん、許す。みかんゼリー嫌いな奴はおらん。」
「素直ー。めっちゃ怒られる思った。プリン食べちゃったから。」
「プリンも大好きやけどな。」
「小学生か。」


やっぱりこういうやりとりが普通。
ほっとするし、楽しい。

やっぱり、さっきの素直すぎるささらくんのことは、一旦忘れようと思った。


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