第8章 板の上の魔物[簓]
「ごちそうさまぁ」
うどんを食べ終わって、少し熱くなった頬から汗が垂れてった。こんな感じか、と画面の向こうの白膠木簓の汗を思い出した。
うどんを食べ終わっても、ささらくんは起きんかった。まだ安らかにすやすやいってる。汗はびっちゃりかいていたので少しだけ拭いてあげた。
デザート食べたいなと思って、ささらくんのために買ってきたプリンを盗み食いした。ゼリーあるから許してくれるんじゃないかな。
「んまぁ…」
多少の罪悪感の中、うどんのあとに食べるプリンはたまらなく美味しかった。プリンってこんなに美味しいものだったなんて。
『次は激甘メニューにでも行きましょかー!』
「んふふっ」
プリンを食べながら、大好きなバライティを観る。
至高だ。
プリンを食べ終わった頃、白膠木簓の出てるバライティも見終わった。やっぱし面白いなぁ、とひとりでうんうん頷いた。リアクションとか、その他諸々。
「ふへぇ…」
「ん…んん…ぁゔ…」
満足で息を漏らした時、後ろから死にそうな声がした。
ささらくんが、魘され始めた。
「ささら、くん?」
「ぁがん……死にた…ない」
いつもと違うささらくんに、ちょっとびっくりした。
「あれま。よしよし。だいじょーぶ。」
「…だれ、か……いる…?」
「いるよ。」
私はゆっくり彼の布団を撫でながら手を握った。
私のより大きい手やった。
あれ、そっかこの手でツッコミとかするんや。芸人さんの手か、なんて思った。
「だいじょーぶ。」
「…なんが……しんと…おれは…」
「…偉いなぁ。…だいじょーぶ。」
真っ赤な顔に手をくっつけて体温を測った。分からんけど多分めっちゃ高い。
「ほしょぅ…まだ…」
「ほしょう……?」
「…いかんで…ごめんなぁ…」
たぶん、風邪の1番きつい時。熱あがって、あがりきったくらいの時かも。
「だいじょーぶ。どこにも行かんよ。いるよ。私でがまんしてね。」
「いかん…かぁ…そ、かぁ」
「うん。」
そこまで言うとささらくんはまただんだん落ち着いていった。死んだんか!?と焦ったけど、脈を確認したら大丈夫やった。びっくりした。
ささらくんが寝たあとも、しばらく私はささらくんの手を握り続けた。
風邪の時のささらくんは、知ってる彼と全然違うみたい。知ってしまったけど、誰にも言わんようにしようと心に決めた。