第8章 板の上の魔物[簓]
台所を借りて簡単にうどんを作った。
ささらくんは食べるかな。まぁ、食べなくても私が食べるけど。
「ささらくーん。うどんー。」
こぼさないようにゆっくり、ささらくんに声をかけながらベッドまで歩いた。
ベッドについて覗き込むと、ささらくんはすやすやと寝息を立てていた。ベッドの近くにあった風邪薬は3錠ほど減っていたのでとりあえずひと安心。
「ふいぃ…」
近くの机にうどんを置いて、ベッドにもたれて一息つく。
改めて部屋の中見てみたけれど、本当になんにもなかった。ミニマリストって、やつみたい。とても、いっつもお掃除業者呼んでますーってボケてる白膠木簓と思えんなぁ、なんて思った。
起こすのも悪いからと、私はスマホでささらくんの出てるバラエティを見始めた。なんとかオンデマンドってやつだ。
画面の向こうでは白膠木簓がよう喋ってる。
激辛タコライスを食べにいく、みたいな企画をやってた。
「…お笑いって…大変やなぁ。」
汗だくになって、唇真っ赤にして。
完食したらなんか貰えるらしい。
たしかささらくん、辛いもの苦手やったはず。
「いろいろ、大変や。白膠木簓って、凄いなぁ。」
ささらくんは、相方と解散したり、急に東京行ったり、訳分からんくらいいろいろ大変やったらしい。
私はささらくんの過去とか深み、よく知らん。
どうやってネタ作ってるのかも知らん。ネタ作ってるとこ見たことないし、よく分からん。
あれ、ほんとに仲良し?なんて心配になることもある。どこまでも真面目なのは分かるけど全くいつかは頼りなさいよね私に!、と常日頃から思っている。
頼ってくれないのは少し寂しいけど、私はささらくんのこと大好きやし。白膠木簓の(自称)1番の大ファンやし。
うん、まずはそれで。
それでいいと思ってる。
『はぁー!完食しましたぁー!』
画面の向こうの白膠木簓は、笑顔で激辛タコライスを食べ終わってた。凄いなぁ、とまた独り言が零れてった。
白膠木簓はほんまにすごいお笑い芸人やって、いっつも思う。
「あ、うどんのびた。…たべちゃうか。」
伸びたうどんはちょっぴりしょっぱくて、食べてもらわんで良かったって思った。