第6章 転がる岩、君に朝が降る[帝統]
気がつくとあのゴミ捨て場の前にいた。
あの、とは家から一番近くのゴミ捨て場の事である。
当然のごとくそこにはゴミだけが転がっており、特筆すべき点はなかった。ちょっとだけカラスがゴミを散らしているってだけ。
部屋に戻っても誰もいない。
当然である。誰もいないし、これから誰か訪ねてくる用事もない。
入ったサークルからことごとくドロップアウトした私は独り静かに、平和に夕飯を食べる。
これが私の生活である。
特に特筆することの無い生活だ。
レポートも全て期限中に出してるし、授業も出ている。
夕飯を食べ終わったあと、ふと思い返してみる。
私の憧れの人、私が密かに憧れていた先輩は、今日彼女を連れていた。小柄で大層可憐な女の子。
ちょっとショックだった。
密かに、恋をしていただけなのでやけ酒に走るほどのショックでは無いんだけれど。
はぁと小さくため息をつくが、それについて言及してくるような鬱陶しいやつはいない。
誰かにこの気持ちを打ち明けたい、そう思ったが、私には気兼ねなく話せる友人もいない。
誰か1人いた気がする。
なんだろう、誰だろう。
洗い物をすませた私は、お気に入りのゾウさんスリッパをパタパタならし、自慢のベッドにぼふんと埋まる。
こんな生活をもう何日も何日も。
平和で静かな日々が何日も何日も。
なんだか、この生活には何かが物足りない。
何だかとても、淋しくて、つまらない。
ああ、こんな時に友だちがいればなぁと私は妄想を始める。
パンツ一丁で家に訪ねてくるような、持ち金も衣服も全て賭けてスるような、ご飯をたかってくるような。
そんなやつでも本当は優しくて、大切な友達も紹介してくれて、友達のことを大切にしてくれて。
そんな、大切な友達が、欲しいな。
そんな厄介な奴がいたら私はどうしてやろう。
キャベツでも投げて応戦してやろうか。
塩でもかけて追い払ってやろうか。
大変だろうけど、きっと楽しいだろうな。
布団に埋もれた私の口から、ふふふと少し笑いがもれた。
そんな宿敵でもいたならば、
このキャンパスライフは薔薇色だったんだろうな。