第4章 こんにちは またあした [瀬呂]
『誘っちゃダメだよ。』
電車のガタンゴトンをBGMに、つむぎの頭ではそれがぐるぐるした。エコーがかかって、ぼわんぼわんと反響して。
どういう意味なんだろう、意味深なのか、良いように捉えちゃっていいものか。
もしかしたら、変な意味かもしれない。
うわぅ。
つむぎは今、ドアに背をもたれさせて、3人の会話を聞いている。
学校で起こることだから、会話にも入れないし、心理状況的にも入れないし。いろいろ気になって。
なんとなく、もやんとする。
また心が、変な色。
「もー着いちまった!じゃーまたな!つむぎちゃんも!今度お茶行こ!お茶!」
「ん、じゃあな。」
「あ、うん。ありがとうっ、ばいばい!」
上鳴くんが初めに降りて、それから切島くん、芦戸さんの順に降りてった。
瀬呂くんだけ、残った。
ふたりっきり、みたい。
それを脳内で言葉にすると、つむぎの脳は痺れた。手足が麻痺して、頬が熱々になって、息が出来なくなる。
「そーいやつむぎさ、今日はどーして違う駅だった?」
「ひぇっ、」
瀬呂くんが、にんまり笑っそういう。
いじわるい顔だ、ってつむぎは思った。
「あ、や。あ、の、ね。それ、は。」
「うん。なんでかなーって、思ったんだけど。」
いじわるい顔だ。
息が出来なくなる。脳が痺れる。
「いえ、ないっ、か、なっ!」
「ふうん。」
ふうんって言われた、とつむぎはショックを受けた。ふうんってなんだ、どういうことだ、どういう意味なんだ。
どんな言葉もどんな意味なのかって、いっぱい考えてしまう。そんなの、あんまし考えたこと無かったのに。
どれもこれも、息できないのも、
好き、
だからだ。
「しかた、ない、の。」
「仕方ないって、」
「瀬呂くんの、せいだって、言っても、過言ではない…のだ。」
「どんな語尾だよ。何者?」
彼はいつもと同じにけたけた笑った。
変な言葉遣いになりながら、つむぎは語る。下を向きながら、熱々な顔のまま。
伝えたいという気持ちが膨らんでいるのを、つむぎは感じていた。