第4章 こんにちは またあした [瀬呂]
つむぎは、なんて惚れっぽいんだ、なんて頬をおさえた。惚れる、だって。きゃー!
「また瀬呂くんのこと考えてる。」
「うぇへへ。」
つむぎは友人の言葉にキモい笑い方で返した。
地味だろうが、どんまいだろうが、つむぎはそういう彼が好きなのだ。
「今日はねぇ、おはようって言ってくれてねぇ。」
「もう聞いた。」
「ふっふっ、へへへ…」
考えるだけで胸がカッカして楽しい。つむぎは、これが恋かと頬を赤らめ、それからにへっと笑う。恋だってー、やだぁ。
「つむぎはさ、告白とかしないの?」
「こっこ!?」
思ってもみなかった言葉に、つむぎは目からウロコだった。確かに、確かにそうだ。
「付き合いたいとか、考えるでしょ?」
「つ、つつっ!?」
顔がぼぉっと熱くなった。
あちぃあちぃ。
好きってことは、そういうこと…なのか?私はバナナジュースとは付き合いたいと思わないから必ずしもそういうわけではないだろうけど。
私のこの好きは、そういうこと…か。
付き合いたい、だなんて…!
「好きならガンガン攻めなきゃ。」
「せ、」
「いい加減日本語喋って」
「ひゃい。」
ううわぁ、とつむぎは長考した。
もし付き合ったら、いつでも会える?
わあ、気兼ねなくはなしかけられる?
デート?
ペアグッズ?
記念日?
ふたりだけの、特別な、夜…ひぇぇええ!
死んでしまう、悶え死にしてしまう!
これはいけない…どんどんビジョンが見える…!
それで何十年も一緒に過ごして、私が杖をついて歩いてる隣には彼が…。
って、私はもうその頃白髪か。似合うかな。ロングスカートとか着ちゃって。ロングスカート似合わないんだけどなぁ、似合うようになるのかな。髪は短めかな、いや長めかな。
えーと、なんだっけ。
「うわぁ長考するね。」
「…付き合うって、やべぇ。」
「じゃあまず、彼女いるかどうか聞きなよ。」
「え、居るの?」
「知らんよ!」
彼女が居るかもしれないという可能性は、つむぎの心にまた新たな色を広げる。青っぽい、黒っぽい。
これが恋の痛みか…なんて勝手に思って、つむぎはまた悶えた。
恋の痛みって、それっぽい!きゃー!恥ずかしー!