第4章 こんにちは またあした [瀬呂]
「わ、またつむぎがニヤニヤしてる。さては今日愛しの彼に会ったな。」
「わ、なにゆえ」
「わからないと思ってたの?」
つむぎはいつもの様に、もっと言えばいつもよりもポーカーフェイスでいたつもりだったが、それはつむぎの中でだけだったようだ。友人数名にすぐバレる。
観念したつむぎは、今日起きたことをつらつら語った。
「駅でね、きょうね、会ってさ、でさ、今日さっいっぱい話してさ、なんか凄かった!」
「語彙が無さすぎる。」
「感動は伝わる。」
説明下手プラス語彙力のなさプラス興奮気味でごちゃごちゃの説明になった。別に伝わらなくてもいいし、とつむぎは負け惜しみをした。へんだ。
「にしてもなぜ雄英の瀬呂くんかね。」
「そうそれよ。雄英といえば轟くんとか、かっこよくない?」
「わかるわかるっ、轟くんね!イケメン!」
頭でぽやっと轟くんを思い出し、つむぎはうーむと考える。体育祭、瀬呂くん知り合ってから、録画したのをちゃんと見て、その時テレビで見た。うん。確かにあれだ、イケメンだ。なんか強いし、うむ。
「つむぎ考えてるよ。」
「まじか。つむぎも考えるんだ。」
そりゃ考えるわ!と言い返したいのも山々だけど、つむぎは大人なので我慢する。
残念ながら、つむぎの中では、轟くんと瀬呂くんでは決定的な差がある。
瀬呂くんがいいって言うのにはちゃんとした理由があるのだ。
単に雰囲気が好きとかそんなんじゃ。
やだ好きとか(頭の中で)言っちゃった!
「んふふ」
「つむぎ笑ってるよ。」
「何考えてんだ。」
「君たちに瀬呂くんの良さは教えないもん。うぇへへ。」
つむぎが少々気味悪く笑うと、友人達はシラケた顔をして、違う話題を開始した。
なんだよ。む。
ムッとしたつむぎは彼女らの肩らへんにチョップを落とす。話題変えちゃってごめんごめん、くらいのリアクションを予想して。
結果的は予想通りには行かず、つむぎの頭は、ぐわんぐわんと揺れた。
ハンムラビ式だった。