第3章 或る街の群青 [死柄木]
『連日個性による降雨を引き起こしていた個性が判明しました。発見された個性の持ち主は、ヒーロー事務所に送検され、個性の調整が行われる予定です。いやぁ、早く、青空が見たいですね。』
この間までは四苦八苦していた気象予報士は、テレビの向こうで張り付けたような笑顔で笑っている。
雨が、止むのか。
雨を降らしたそいつは、敵(ヴィラン)なのか。
いつもより少しだけ重たい足を引きずって、いつもの場所へと向かう。
なぜだろう。
雨が体に、染み込んだから?
そんな問いには答えはない。
今日の雨粒は大きくて、傘は何度も大きくはじかれた。
「おい……」
いつもの場所へと向けたその言葉は、雨へと溶けていった。
いつものようにバス停の椅子に座っているそいつはいなくて。
雨の中、そいつは一人、立ち尽くしていた。
そいつの目線は、薄汚いガードレールのもとに。
そこには、傘を差した女がひとり、花を持ってしゃがんでいた。