第2章 Hero Appears [轟]
『俺はお前のカッコ悪いところ、見たくない。』
今私は、かつてないほどカッコ悪い。
恨み節なんかを捨てぜりふにして、大切な彼にアドバイスひとつできずに。
テレビ画面には、
【雄英高校体育祭!盛り上がるヒーロー業界!】
と画面いっぱいに広がってた。
「…体育祭…。」
「おはよう。あら?あんた体育祭見に行くわよね?焦凍くんでるし。」
「あー…んー。」
いつもと同じに気の抜けたお母さんの声。
改めて家の平凡さと平和さを噛み締めた。
テレビの前のソファに座り、天井を見上げる。
「…わかるわけ、ないよ。」
「なにー?なんか言った?」
「なんでもないー!」
「そう。あんた行くなら早く支度しなさい!」
「分かってるー!」
リビングのソファに沈みながら、テレビを見た。
支度が億劫だった。
昨日のこともあり、行きたくないのが本音だ。
目の前の低い机の上の、小さな冊子に何の気なしに手をやった。
ペラペラとページを捲ると、そこには笑顔があった。
「あれ…ねぇおかーさん、これなーにー?」
「それねー。懐かしいでしょー。掃除してたら出てきたの。アンタの小学生くらいの時のよ。」
写真だらけの小さな冊子。
何処も彼処も私のあほ面でいっぱい。
何も考えてない、“完全無敵”の笑顔ばかりだった。
「あ」
一枚ペラリと手に取った。
その写真は、
『僕、つむぎみたいになれるかな。』
『さぁね!だって私は、』
「これ…」
胸に小さく火が灯った。
「あっ!わ、私行かなきゃ!」
「なんてー?」
「行かなきゃ!!急がなきゃ!」
熱く、明るい、ひとつの光。
「待ってる…。彼が待ってる!」
その写真の笑顔は、私に優しく火をつけた。