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lovesong birds【短編集】

第2章 Hero Appears [轟]




『雄英高校に推薦入学なんだって、轟くん。』


噂話をする高い声を聞きながら、私は願書の下書きを書いていたのを覚えている。


彼が雄英高校に推薦入学なことは、その噂話で初めて知ったけど、なんとなく、 分かってた。

あの人は強いもの。
身体の使い方も、反応も、個性も。
一つ頭抜けて、彼は凄い。

だから推薦なんて、当たり前。

当たり前。


ポキん


シャーペンの芯が折れる音がした。
そのまま少し、動けなかった。


『つむぎ。』

『あっ。ごめん、気づかなかった。集中して…書いてた…から。』


顔をあげれば彼がいて、私は思わず願書を隠してた。


『つむぎ…』

彼が気にしてしまうのは

私は、だって


『凄いじゃん、応援するし。』


私は、笑えていたのだろうか。
心からって顔に、見えていたんだろうか。


『…そうか。』


何枚も何枚も書いた願書の中に、彼と同じの高校の名前もあった。


一番下に、一番奥に、隠した。


『帰ろっか。』
『ああ。』


少し、声、震えてた?

彼は、気づいた?


書類を全部詰め込んだ、パンパンのカバンを肩にかけた。

重たかった。


『ゆーえーだって!あの体育祭!君も出るんだねぇ!』
『うん。』
『楽しみだね。』
『つむぎも、な。』
『…うん、そうだね。』


カバンが、重たかった。


“普通科”


いっぱいの願書の中の、ひとつあるその文字を、放り投げたかった。


『期待してるよ。』


期待という言葉を、その時初めて使った。


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