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lovesong birds【短編集】

第10章 それでは、また明日[空却]




「待たせてごめん、で…何話すんだろ?なんもわかんないや。」
「んーまぁ、お話し、兼サボり?」
「ちょっと、灼空さんに迷惑かけないでよね。めちゃくちゃいい人なんだから。」
「はんっ」


空劫はつむぎの言葉を鼻で笑った後、つむぎのベットにドカッと腰をかけた。

つむぎもその隣に、体育座りをして目を瞑った。


男女の友情なんてありえないというが、つむぎはあり得ると思っていたかった。その方が、安心する。そういう関係が、好きだった。


「そういや大学の話とか聞いてねぇな。ほら、アレにも書いたろ。」
「あー、あれ……か。あれ…ありがとうね。」
「はぁ?感謝されることでねぇだろ。」
「それが…ね。いろいろ、あってさ。」


何食わぬ顔でスマホを触り始める空劫に、ポツンとつぶやく。



「私、死のうと思ってさ。」



空劫はすぐには反応しなくて、一拍おいてから小さく「は」と言った。

「死のうとして、失敗した。」
「…そうか」
「もっかい、今度は確実な方法で死のうとして、そしたら、空劫のそれがあって、それで、もう一回会いたいって、思って、それで、なんていうか、でも、心配させちゃ、なんていうか、こんな、急に、私ほんとに、」
「…うん。」
「ごめん。」
「うん。」

支離滅裂で、文章になっていないつむぎの言葉を、空劫はただうなずいて、受け止めた。ただその言葉を飲み込んでいった。


それからつむぎはゆっくり今までのことを話した。
少しずつ。

勉強についていけなかったこと。人間関係がうまくいかなかったこと。過去にあったちょっとした辛い思い出。父のこと。母のこと。

そんな小さなことが重なって、重なり続けて、心が壊れてしまったこと。


「誰にも言わなかった。」
「うん。」
「はっきりした原因がない。なんて言えばいいのか。こんないい加減でバカみたいな理由で、学校いけなくなるなんて。」

恥ずかしくて、仕方なかった。

「……おいてあった家計簿、みた?」
「…見てはない。」
「お母さん、私を大学へ通わせるために、女でひとつでさ、お父さんが死んでからずっと、生活切り詰めて、それで、ようやく、だったのに、私は、帰ってきちゃうし。」


自分を守るように膝を引き寄せて、ゆっくり、続ける。
もうそれしか、できなくなっていた。


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