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lovesong birds【短編集】

第10章 それでは、また明日[空却]




つむぎが目を覚ますと、時計はすでに14時を回っていた。


頭が、痛い。

むっくり身体を起こして外を見ると、しとしとと雨が降っていた。


床に足をつけると、身体はヒヤリと冷えた。
つむぎは布団を体に巻き付けて立ち上がり、ガラクタだらけで埃っぽい部屋をそそくさとぬけてのそのそと居間へ向かった。


机の上にはごちゃごちゃと物が多く、雑多としている。いつも通りで当たり前のことなのだけれど、今日はその中の一つが嫌に目が付いた。


いっぱいの赤色で書き込まれた、お母さんの手帳。

見た瞬間、ぐらっと息が止まりそうになった。倒れそうになった。倒れそうになりながら、慌てて手帳を閉じた。

これ以上見て、いられない。


羽織った布団にくるまるようにしゃがみ込む。
誰もいなくて、本当に良かったと、思った。


「うぅうぅぅぅ…」

意味もなく唸り声を出す。
つむぎの唸り声と雨音だけが、部屋に響く。


『ピンポーン』


むっくり起き上ってインターフォンを見れば、見慣れた赤色が。

ほっとしたような、不安なような。


「はぁい。」
『あけろー。』

布団を見えないところにぽいと捨てて、慌てて玄関へ向かった。


ドアノブに手を掛けようとして、つむぎの手はぴたりと止まる。

扉を開けることをためらった。


「か、鍵、あけたから!入っていいよ。」
「んー?おぉ、なんだぁ?」

空劫が、当たり前のように扉を開けた。空劫が開けた扉から冷たい風が吹きつけて、つむぎの前髪がめくれる。


ちゃんと、扉、開いた。


「何の用?」
「もうすぐ親父さん十三回忌だろ。その話とかもろもろしてこいってさ。」
「灼空さんが?」
「おう。」
「そっかぁ。十三回忌か……。まぁ、とりあえずどうぞ。なんのお構いもできないけど…。」
「おう。邪魔するわ。」

スリッパを用意して、空劫が入る前にと部屋へ駆けいる。予想外の来客に、つむぎは心底慌てていたのだ。


少し待つ間、空劫は特に何も言わなかった。何も言わないでただ、居間にいた。あの手帳を見ていた。


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