第9章 荒野を歩け[帝統]
つむぎは独りでシブヤを歩く。
独りで歩くのは当たり前だしいつもの事なのだけれど、最近は何だかずっと寂しくて、落ち着かない。
「ピンゾロ5倍づけ…てなんだ?」
最近変な独り言も増えた。
帰路を辿っているとざわめきがいっそう大きくなった。何だろう、とそちらを向けば見たことあるピンク色の髪が揺れていて、
「…あ」
声が漏れた。
飴村乱数だ。
彼なら、なにか知ってるかも。
何をか。
それは頭の中で名前を出すのも恥ずかしい友人のこと。
彼に話しかけようとつむぎが近寄っても、周りの女子たちの壁は厚かった。
彼が1人になったら話そうかと思っても、なかなか1人にならない。1人居なくなったと思ったらすぐもう1人。そしてまた1人。
待ってたら日が暮れそうで、彼のあとを追うのももう疲れた。
もうやめた、何してんだか。
なんて踵を返した時、その声はかかった。
「ねー、おねーさん!さっきから僕のこと見てるよね。なにか用?」
「んぎゃ、」
色気も何もない声を出して振り返れば、さっきのピンク色の髪が目の前にあった。
「あ、飴村、乱数…さん、ですよね。」
「うん!そうだよ!」
これでもかと溢れるキラキラエフェクトにつむぎは少しばかり目をしばしばさせる。
「あ、や、ただの、ファンで、して。その、」
「そぉなんだー!応援ありがとーおねーさん!」
「いや、あの、その……ほんとにただのファンなんですけど、」
「うん!」
「あの、だ……Dead or Alive…さんって、生きて、ます?」
震える声を隠すように、つむぎは友人を違う名前で呼んだ。
「んー?帝統?多分生きてるよ!」
「あ、そうですか。…良かった。」
「どーしてそんなこと聞くのー?」
「それは、」
友人として、色々気になるから。
心配だから。
寂しいから。
「…ファン、なので。あの人ってほら、よく消息が不明になるじゃないですか。」
嘘は、昔から下手っぴ。
「ふーん、そーなんだ!あー!帝統もしかしたらあの賭場に居るかも!一緒に行ってみよー!」
「えっ」
私が答えを出す前に、彼は私の手を引いた。
「レッツゴー!」なんて楽しそうに。
「嘘はもうちょっと上手につかなきゃねっ、帝統の友達のおねーさん!」
「ひぇ、」
下手っぴな嘘は、バレていた。