第9章 荒野を歩け[帝統]
「あ、う、」
改めてちゃんと帝統の顔を見たつむぎは、口をぽかんと開けて顔を赤くする。
なんか帝統って、
意外と、思いのほか、案外、結構、
モテそう。
切れ長の目を縁取る長い睫毛。しゅっと通った鼻筋にちょんとお行儀良い唇。髪型は独特だけどよく似合ってる。それだけじゃなくて、手足もスラッと長くてスタイル良くて、白いパンツや長いコートがやたらと様になっている。
タバコ臭かったり、がめつかったり、賭ケグルイだったりなところを隠せば多分めちゃくちゃモテる。
はっきりと言ってしまえば、
帝統はかっ―――いや、
かっこ――うんうん、
かっこい――まぁそうそう。
「かっこいい」
それだけの言葉が、つっかかって出てこなかった。つむぎの脳のどこかの部位が、帝統を「かっこいい」とすることを全力で拒否していた。
いや何故なのか。帝統をつむぎの中の「かっこいい」のカテゴリーに入れるのは、どうしてもはばかられていたのだ。
そんな失礼なことを思われているとはつゆ知らず、帝統はつむぎの真っ赤な顔をじっと見ていた。
やっぱしキスしてぇなぁなんて、下心満載なことを考えながら。
「あれだ、そっか、“おかしい”、だ。」
「へ?」
「あ、や、帝統のカテゴリーが。」
「はぁぁあ!?」
いきなりのつむぎの辛辣な言葉に、帝統は口の中の米を四方八方に飛ばした。帝統の口からの米スプリンクラーにつむぎは悲鳴をあげる。
「ぎゃあ!!米、こめっ!!」
「なんだそのカテゴリーって!!俺は!おかしいのか!?」
「その前に米っ!米が!」
飛び上がって自分の米を死守するつむぎは帝統に抗議の目を向けた。帝統の方も変なカテゴリーに入れられたことへ抗議が止まらない。
「“おかしい”ってなんだよ!」
「そのまんま。私にとって帝統は奇人変人超人原人ってかんじ。」
「なんか最後の方変なの混ざってねぇ?」
自分の茶碗を避難させたつむぎは改めて帝統に向かい合い正座し、説明を開始する。
「ほんと?……その、好き……って。」
「あ、あぁ……好きだ。」
「うーわーあー!」
いざ真面目に話すとなると照れくさいやら難しいやらで、つむぎは腕組みをしてうんうん唸る。
「なんかさ、湯呑みでジュース飲むくらいの違和感。」