第5章 カ タ チ
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『エース?』
辺り一面暗闇に包まれる中、彼の後ろ姿を見つけた。
不思議と淡い光を纏って、ぽつんと暗闇に浮いている
『どうしたの?』
「…………」
問いかけても何も言わない。
少しこちらを振り返ったまま、薄く微笑んでいるだけ
いつも騒がしい彼が、黙って笑う姿は何だか絵になるな、なんてぼんやり思ったりしていた
でもこんなに口を開かないエースはおかしい。
すぐにエースに駆け寄ろうとしたその時、
「見つけた」
闇に響いたのは可憐な声
そしてエースと同じような光が浮かび上がった
人だ。女の人
あれは、多分……
『……イスカ、さん…?何故ここに』
顔はしっかり覚えている。見間違うはずはない
彼女は紛れもない、本物のイスカさんだ
エースの傍に寄り添って、誘うように腕を絡めた
『エース…?』
依然として無言でいる彼に真意を問う
どういうことなのかと。
「俺はイスカと行く」
『…ッ…、、』
それは心のどこかで想像していた言葉
グサリと鋭く深くまで突き刺さったのが、よくわかった
エースが、私ではなくイスカさんを選ぶ…
そんな、そんな……、、
「じゃあな」
エースは私に背を向けて行こうとする
イスカを連れ添って、光の方へ進む
やだ、待って!待ってよ、お願い!
そう叫びたいのに声が出ない
光が強く、眩しくなって目を閉じそうになる
お願い、こっちを見て…っ、私を見て、名前を呼んでよ…っ
……お願い……置いていかないで……!!
『……っ、』
そうして意識は急激に覚醒した
『……夢』
気にしないと決めたはずなのに、夢にまで見るとは……
完全に、振り回されてる…
「どうしたチエ?顔色が悪いよい」
『…なんでもない』
普段と変わらないよう振舞っても、わかる人には分かるみたいで、今日は朝から何人にも声をかけられた
エースは鈍感だから気がついていないようだけど
傍にいるだけでは満足できないと、自覚してしまったからなのか、独占欲のようなものが爆発している気がする……