第5章 カ タ チ
もし、…また2人が出会ったら
その時は一体……
「あっ!いた!!」
声の方に振り返れば、そこには血相を変えたエースがいた。
ぼんやりしていたせいで避けていたことも忘れていた
「ったく、どこに行ってたんだよ…!…探した」
イスカさんのことも…こんな風に探したりするのかな
私のことを気にかけてくれるのは、彼女の代わりだから…なんて
「…はぁっ、あつ」
『っ、』
なんで…、こんなに、汗だくになってまで……
…なんでこんなに必死になってくれるの…?
………………私のことを、探してくれたの
『……ごめん、』
今は、それだけで十分かも…
エースの今を、私が占めているのならそれで
「……何笑ってんだよ」
汗を拭いながら、ジト目で見つめる彼がどうしようもなく愛しい。さっきまでエースを遠くに感じていた分、いつもよりその存在を大きく感じる
私だけを見ていて欲しい、
…そう思うくらい、許して。
『なんでもない』
もしもの事なんて考えたくない。
例え、心のどこかでイスカさんを想っていたとしても、今あなたの目の前にいるのは私だから
かつて踏み台にしてきた何人もの人。イスカさんはそのうちの1人だった
話したことも同じ戦場に立ったこともない人だったけれど、その噂はこの耳にも入っていた。
"釘打ちのイスカ"
その剣術は釘を打つほど正確で、正義感溢れる女海兵であると。
私のもつ地位や勲章は全て、そうやってのし上がって手に入れてきた。上に行くには、誰であっても踏み越えて行くしかないから
これからだって私は、あなたの想いも全部踏み越えていく。
私は、私の力で幸せを掴んでやる
そう決めてあるから。