第5章 カ タ チ
『…いいんだ。……その方がいい。』
何がいいのかスカルは分からなかったが、大凡の検討がついて特に何も言及したりはしなかった。
「じゃあこのリンゴを詰め直すの手伝ってくだせぇ」
『お安い御用』
スカルが運んできた林檎の箱は他にもいくつかあって、それよりも何回りか大きな空き箱を引っ張り出してきた
「白ひげの傘下の船に渡すんでさぁ。」
『なるほど。この船ならかなり貯めて置けるし、貿易なんかも出来そうだ』
沢山貯めておいた食料なんかを、この船で補給してまた任務に出たり、各々の島を守りに行ったりするのか。
「海賊船は商船じゃねぇんですから」
『ダメか?中々いい案だと思ったんだがな』
「貿易するには親父さんの名が揚がりすぎてますよ」
『…ふ、確かに』
年相応とまでは行かないが、この船で中々拝むことが出来ないチエの笑った顔
「姉さん、アンタ部下に慕われてるでしょう」
チエと話していて感じたのは、恐らく人の良さ。上に立つ人の素質というのだろうか、惹き付けられるものが彼と同じくあるのだと感じる。
かつて同じ旗の下、冒険した我らが"エース船長"と同じように、彼女にも人を惹きつける魅力があると思う
『……どうだかな。私は軍の中ではハズレ者らしいからな』
スカルは情報屋で、海賊だけでなく海軍の情報にも詳しいようだった。彼と初めてあった時、サインを求められて吃驚したっけな
「こんな才能の持ち主をハズレ者扱いだなんて、海軍の犬共は目まで腐ってんでさァ!」
『大袈裟だ。私の名はそれほど高くないぞ』
スカルと話していると、班の部下達を思い出す。
今頃どうしているだろう…急に隊長が姿を消したんじゃ、アイツらにも迷惑な話だ
…いや寧ろ清々しているのかも
「海軍で飛び級なんて、普通じゃありえない。余程の実力者って事ですぜ、姉さん」
『……姉さんはよしてくれ』
「俺達海賊も浮かうかしてたら、姉さんに寝首を搔かれちまう…エース船長もそうだった」
『エースが?』
不意に出た話題に思わず耳を傾けてしまった。
スカルと話していたら不思議と、エースへの不満は小さく萎んでいた