第5章 カ タ チ
ニュースクーが朝刊を運んで来て、朝一番に取り替えた白い包帯が日光を跳ね返す。
空は快晴、朝食も美味しかった。敵船にしてはかなり快適な朝だ
………この見張りさえいなければ。
『そんなに四六時中一緒に居なきゃダメ?』
ため息と共に見下ろした先には、私の足元にしゃがみ込んだエースがいる。
朝起きて、医務室を出るまではよかった
開放1番に腕を組み仁王立ちで出待ちされ、朝食は寝まいとしたのかお腹を鳴らしながらも、自分は食べずに私の料理を見続け、至る所についてくる
私がトイレに行ったらお前もついてくるのか、と問いただしたいくらいついてくる
爽やかな朝には似つかわしくない絵面だと心底思いたい。
「これは俺なりの責任の取り方だ」
『…馬鹿はどうやったら治るんだ……』
そりゃあ頭も抱えたくなる。今日の夜には、前々から用意し始めていた個室を使えるようになるそうだし、傷も治ってきて風呂にも入れるけれど、エースがこんな調子なんじゃきっと私が寝てもずっといるだろう
子供の頃とは違うんだ。あの時でさえ部屋は仕切っていたのに、よく思い返せば最近やたらと傍にいないか?
…いや、悪いことではないんだ
嫌とかでもないが、そういうのが原因でトラブルになってるわけだし、もう少し距離感ってものが………
「そんなにカリカリすんなよー。生理か?」
カチン
『…………もういい。着いてこないで』
「は?あっ、おい!」
頭にきた。本当にデリカシーの欠けらも無い…!
走って後方デッキまで駆け抜ければ、見知った骸骨を発見した。
昔からかけっこでは誰にも負けたことがない。密かな特技だから少しは撒けたはずだろう
『スカル、ちょっと助けて』
林檎の箱を抱えた彼を、走ってきた勢いのまま連れ込んだ
「わわわっ、、一体全体なんですかい」
無理矢理押し込んだのはどうやら食料庫で、林檎の箱の置き場所もあっていたようだ
『ごめん、手伝うから匿ってくれ』
「別に構いやせんけど…エース隊長はいいんですかい?」
追いかけてこないところを見ると上手くまけたか、冷静になってくれたかのどちらかだろう
名前を聞くだけで、言いたいことが溢れてきそうだ
思い出させないで欲しい