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花の詠【ONE PIECE】

第5章  カ タ チ





『ありがとう』

ティーチの視線を遮ってくれた2人に礼を言う。


「ああ」

「気にするな」


イゾウは大きく開いた懐に腕を差し込み、ジョズも揃ってこちらを一瞥した




ダイヤモンド・ジョズ


まだ話したことの無い隊長だ。

手配書や船内で見かけたことがある程度で、言葉を交わすのは今日が初めてだった

……なのに、仲裁に入ってくれた。





やがて各々持ち場に戻るなりして船内はいつもの風景に戻った。



私と白ひげを除いて。





「……迷惑をかけた」

『…白ひげ海賊団の船長たる男が、簡単に頭を下げていいのか?』

「バカ息子共の始末は親である俺の責任だァ。俺の頭一つで何とかなるなら訳ねェ」


世界最強の男が、1人の親として対応するなんて海軍にとっては異形でしかないだろう。けれど、在るべき親の形を理想の中でしか知らなかったチエにとっては白ひげという男は、正に理想の父親であった



『……私にも非があった。私が大人しくしていればエースを危険な目に合わせることも…なかったはずだ』



あのまま引き下がっていれば、大人しくティーチ立ちの望むままに泣き叫びでもしていれば大事にはならなかったのかもしれない


ああいう時、屈することも諦めることも自分には出来ないと知っていながら、そんな暗い思考に陥るのは

それ程に責任を感じていたから



「ンなことねェ!」



背中に投げられたたった一言は、一瞬でチエの腹の奥底を湧き上がらせるような熱く眩しい救いの言葉だった



「あれは俺が隊をまとめられていなかったからだ!親父にもお前にも責任はねェッ!それに、お前を巻き込んだ上に命まで救われた」


「俺からも礼を言う…。大事なバカ息子を助けてくれた恩は忘れねェ」



どうしてこう、ここの人達は…




『……、礼なんか、言う必要ない』




純粋な気持ちが、素直な言葉が、喉の奥につっかえて中々出てこない


それでも押し出すように言った





『わ、私が好きでやったんだ…。皆には良くしてもらっているから…』




最後のあたりは自分でも声が小さくなったのが分かった。でも音量を上げられなかったのはむず痒い恥ずかしさと、柄にもない素直な気持ちがあったからだった

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