第2章 名前
3人が地面を蹴った時だった
「おいおい〜俺たちの周り嗅ぎ回っておいて大人しく逃げるってか〜?ケケッ」
岩陰からひょろ長い男が姿を現した
「…冗談じゃない」
「…っ、」
『…まさか、こっちが当たりくじだったとは..........ガシュトル』
チエは小声で名を呼び目配せをした
「おっとぉ、」
「…っ!?」
ガシュトルが子電伝虫を後ろ手に操作し始めた時、既にジャックは後ろにいた
(なんて速さなのっ…!?)
素早くガシュトルの腕をひねり揚げ首元にナイフを突きつける
『ジャック・ザ・リッパー。ブラッディ海賊団船長…』
間合いを確認しつつ、相手の隙を伺う
下手に動いたら、部下の命はない
『そして大量殺人を犯した猟奇殺人犯……あなたの好みは黒髪の女!』
チエはパサりと帽子を取り、中にまとめていた肩より少し長い黒髪を振って見せた
「……ケケケッ…いいぜぇ、ドストライクだぁ!気に入った俺のこの可愛い得物でテメェを切り刻んでやるぅ!」
来た
『ガシュトル!J!』
チエの掛け声とともにすかさずガシュトルが肘でジャックの首元を攻撃し、Jが武器を蹴り落とす
そしてすぐさま3人が走り出した
「くっそぉ…あの女ァ!切り刻んでやる…ッ!!」
チエの背中に向けてジャックがナイフを3本投げた
(まずいっ、、間に合わ…っ)
キィイイン
「…っとぉ、あっぶねぇ。いい女なのはわかるがうちらの隊長さまなんでね」
ナイフを防いだのはチエの同期にしてセクハラ男
『ナイル!?何故ここに!』
「隊長さまの部下は優秀だねぇ…っ。信号で一番近くの班に連絡してくれたよ」
ナイルはガシュトルを顎で指し、剣を構える
「…ちっ、男は好みじゃねぇが……こんだけ切れれば十分だぁ」
ジャックはチエたちを見据えてニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべる
『その信号を受けたのはお前の班か。他の応援は!』
「あ、俺が信号受け取って突っ走ってきた」
あは、と言わんばかりに頭に手を当てて苦笑いしてみせるナイル
(こいつから狩ってやろうかッ!!)
「微弱だが、いい殺気だァ」
間延びした声がチエに、近づく