第2章 名前
時刻明け方4時
軍艦に乗って隣の島に着くと、私たちの班は奴らの船を見張ることになった
交代で見張っているものの、班のメンバーの顔には疲れが出ている
致し方ないことだが、任務成功のためにも何とか改善したいところだ
「…動きませんね」
じっと岩陰に息を潜め、船から視点を移さないガシュトル
『うん、前の班から引き継いだ分を合わせても既に24時間を経過しているが…船に戻ってくる様子はないし、案外用心深いんだな…見張りが多い。偵察に行ったニックから連絡は』
「ありません。」
電伝虫とメモを持っているのはニット帽を目深に被ったJ
名前も顔も晒したくないらしい。
ガシュトルとJ、私は岩場から船を見張り、ナナハ、ニックには出払った仲間と船周辺の偵察に出てもらっている。
皆、成績優秀でよく動いてくれる
私が大佐クラスになったら是非部下につけたい。
そんなことを思っていた時だった
「プルプルプル…」
「「『!!』」」
待ちに待っていた連絡がようやく来た
「プルプルプル、ガチャ」
受話器を素早く取り、小声で話す。
『こちら海岸線沿いA。そちらはどうなっている』
【こちら港街B。村から10名ほど船に戻る様子】
落ち着いた低音の声が波の音にかき消される前に耳に入って木霊する
偵察に出ていたニックからだ。
『その中にジャックの姿は』
【…ありません。しかし、ジャック以外の出払っていたメンバーです】
『なに?ジャックだけがいないと?』
【えぇ…何かの罠かと】
副船長含めほとんどが船へと戻ってきているのに船長のジャックだけが戻ってない…つまり今やつは単独行動であると考えられる
『やはり、私たちに気づいているか』
【どうします?】
このまま見張りを続けるべきだが…相手が気づいているとなると危険だ
ここは一旦距離を取り、各持ち場へ連絡すべきだろう
『まずは本部に報告してくれ。ナナハは一緒にいるな?くれぐれも敵に見つからないようにG地区集合だ。もし敵と遭遇した場合、即時応援を要請し、お前達は逃げろ。いいな』
【了解】
プツリと通話が切れると既に事態を把握した二人が機材をまとめ終え、背中に背負った
『よし、行くぞっ』