第4章 クジラの背中
ジジィは俺にこう言った。
【そりゃおめぇ・・・生きてみればわかる】
17年生きてきて、まだ俺はわからずにいる。
"生きていてもいいのか"というただ一つの問いに、17年かかっても答えは出ない
…歳を重ね、サボと出会い、そしてルフィとも出会った
俺は昔から山に行って、食材狩りとして猛獣たちを倒していた。チエはそれを調理する役割で、その他に掃除や洗濯、フーシャ村に降りて買い物に行ったりもして、ルフィとも会ったことがあるようだった
だからルフィが来た時、チエに1番に懐いた。
チエの作る飯は、すごく美味い。ルフィが来るまでの10年間はろくに話したことも無いが、チエの飯を食わなかった日もない
それぐらい美味かった
ルフィが来てから、ルフィとチエが一緒にいるところをよく見かけるようになって、次第にルフィだけでなくチエの姿も視界に収めるようになった
いなければ探すようにも。
チエの飯を食って美味いと思う度に、俺の胃袋はとっくの昔から掴まれていたのかもしれない。
3人と過ごしていく中で、俺はどうしてチエを嫌っていたのかわからなくなっていった。1番大きいのはチエの過去を知ったからだ
ずっとチエが家族を大事に思い、暖かい家庭で育ってきたとばかり思っていた。美味い料理も、洗濯も、みんな優しい母親が教えてくれたのでは無いか。父親が海賊でも、家族として想えるような家庭だったのではないかと。
でも全く違った
【なぁ、お前の親はどんな人だった】
どんな家庭で育てば、幸せになれるのか
誰といれば俺は、その幸せを手に入れられるのか
知りたかった
【父は碌でもない人だったよ。ご飯は博打に買った時にしかなかったし、いつも負けばかりで、酒と女に溺れてたまに帰ってくる……そんな人だったよ】
最初は驚いた
想像していたものとは違っていたから
でも一番驚いたのは、特に悲しそうな素振りを見せずに話すチエにだった
【母親は…】
【知らない。母の話をすると、父はよく怒って手がつけられなくなるから深く聞いたことない】
……チエは、、幸せなんだろうか
もしかしたら、本当は、……俺と、似ているのかもしれない