第4章 クジラの背中
チエが明るい表情を見せる度、俺はチエのことが嫌いになっていった
俺よりも、幸せな人生
俺よりも、祝福された人生
どうせ俺は、犯罪者の息子だ
俺も大罪人の血を引いた鬼の子だと、世界から疎まれる
自分の父親が、海賊王だと知って俺は荒れた。街に行って、ロジャーについて聞けば、皆が口を揃えてこう言った
とんでもないクズ野郎、生きていても迷惑、死んでも大迷惑、世界最低のゴミだと
そして、生まれてくる子も世の中は望んでいないと
どいつもこいつも、街でハズレ者として生きている奴らが、自分たちよりも下だと言って、ロジャーや俺を蔑む
それが気に食わなかった
わかってる。誰も俺を肯定してくれないのは
わかっていても、聞いてしまうのは、どこかに俺自身を見てくれる人がいるんじゃないかと期待しているからだ
そして同じ結果しか得られない毎日に、どうしようもなく怒り狂っていた
そんなある日、俺はふと幸せそうなやつにこの質問をしたことがなかったなと思った。誰かに聞いてみたい、今度こそ、俺を認めてくれる誰かが現れるんじゃないか、確かめてみたい
けれどもし、叩きのめしてきた不良共と同じ答えしか得られなかったら。
俺はどうすればいい
俺自身を認めて欲しいという思いと、受け入れられなかった時に、行き場のない感情を相手にぶつけてそれでいいのかという思い。もし、これまでやってきたことが間違いならば、俺はもう既に海賊王と同じ犯罪者なのだろうか
だとしたら俺は一体どうすればいい
この抑えきれない怒りを誰にぶつけたらいい。
【エース、ここにおったか】
海を眺めて考えていた時、現れたのはガープだった。
【ジジィには孫がいるんだろう?・・・そいつは・・・幸せそうか?】
【ああルフィか。元気に育っとるわい】
ジジイに大事にされてるんだろうな
見てれば何となくわかる
なぁ、俺には…
俺にはいつ、そんな人が現れるんだ
俺はこのまま、生きていてもいいのか……?
【・・・・ジジィ、おれは・・・生まれてきてもよかったのかな・・・】