第2章 名前
…ムカつく
手配書と記事の中のエースは仲間と凄く楽しそうに笑ってて、戦ってる時でさえも生き生きとした顔をしてた
……私を置いていって…あんなに楽しんでるなんて
知らないうちにあんなに仲間も増えてて
そりゃあ、海賊になるってことは自分の船を持ってたくさんの仲間を持つものなんだろうけどさ
まさかこんなに早いなんて思わないじゃない
なんだかエースに先を越された気分になった
アイツはもう手配書に顔を連ねる海賊になった
私はまだ街を警備するくらいしか仕事のない准尉
准尉なんかじゃエースを捕まえられない…っ、
私はもっと、もっと強くならなきゃいけない
階級をどんどん上げて、いつか自分の戦艦を指揮して……
『大佐…いや、中将…』
そこまでたどり着くのに一体何年かかるのだろう
やはり、早く海に出て追うためにはお鶴さんやじーさんの船に乗った方がいいんだろうか
……今度試しに乗せてもらおうかな
コンコン
『…?はい』
グシャグシャに掻き乱した髪を手櫛でまとめ、扉に向かう
「よっ」
扉が開くや否や、扉をガッと左手で掴み、右手で挨拶してみせる彼。私は即刻閉めてやろうと思い力を入れるが扉がミシミシと鳴るだけだった
『…何の用』
「そう怖い顔すんなって」
怖い顔もするわ。何せこいつと私は同期にして初対面にもかかわらず堂々と私にセクハラしてきた男だ。
とんだお調子者の能天気バカ
『用がないなら帰って』
「待てって、ちゃんと人の話は聞こうぜ。隣の島に“血塗れのジャック”が来てるらしい。」
血塗れのジャックと言えば一つの島の住人をたった一人で殺し回ったという、あの…
確か賞金は6500万ベリー…海賊として名乗りを上げてから5、6年程。その間犯した罪はどれも殺人、強盗…
ジャック率いるブラッディー海賊団は猟奇的殺人の集団とも言える程、極悪最悪…
『…で?』
「俺たちの部隊とお前の隊追加で行くことになったから」
『わかった。各自に伝えておこう。あと、口を慎め。一応お前の上官だぞ』
「へいへい、上官様」
首を竦めて見せるが、それはとことん私を怒らせるだけだった。
『用が済んだなら帰れ!』
バタンと無理やり扉を閉め、電伝虫を手に取った