第4章 クジラの背中
ティーチの太い人差し指を軸に、ペンダントが左右に揺れてその勢いのまま宙へ投げ出された
「…っ!」
『!!!』
まずい、あのままじゃ海に……っ!
『……っ!?』
その刹那頬を掠めたのは、あつい熱
熱風と共に駆け抜ける炎の影とその背に背負った白ひげのマークから吹き出る熱いあつい炎が目に強い光の残像を残す
それは真っ逆さまに落ちていくペンダント目掛けて、共に海へ誘われて行った
『…エース!!!』
サッチに頼まれた仕事を早く終えて、チエのところへ行こうと炎を全開にして飛ばした
モビーディック号の背中が見えて、そのまま追いついて行けば何やら不穏な空気を感じてそこでストライカーを止めた
案の定、不穏な場面であった。
マストに誰か縛られていて、野郎数人でタコ殴りにしていた。その中にティーチの姿を捉えて咄嗟に声を発した
「何してやがる」
屋根に飛び移る瞬間、チラリと見えた長い黒髪
もちろんイゾウじゃない。この船でこういう危険性があったのは紛れもなく俺の大事な人だった
「おー、エース隊長じゃねぇか!随分と早いお帰りで」
「御託はいい。こりゃあ、一体どういうことだティーチ」
込み上げた怒りが自然と声に乗る。それでも拳を抑え、問いただした。
「聞いてくれエース隊長、コイツ怪しいもんを持ってたから他にもねェか、確かめてたんだよォ」
だからって女1人に男数人で寄って集るかよ
もしチエがティーチの癇に障ることを言ったのなら敵意を向けられでもおかしくはない。だが、チエも無駄な争いを好んでするようなやつじゃない
「これも何かの武器かもしれねぇ」
そう言って俺に掲げて見せたのは、翡翠色のペンダントだった
「……余程大事らしい。……
…にしても綺麗な宝石だなァ、一体誰に貰ったんだ?」
ブツブツとこちらには聞こえない声で、ティーチとチエが言葉を交わしている
聞こえてくる単語だけを拾うと、どうやらそれはチエの大事なものらしかった