第4章 クジラの背中
「エ、エース隊長ッ!?」
(……っ!?)
男の視線からするに、後ろの屋根の部分にいるんだろう
マストが邪魔で見えない
「任務に言ってたはずじゃ……」
「は、は早すぎじゃねぇかっ?」
ヒソヒソと仲間内で話すその声には、恐怖が感じ取れる。エースのことを、恐ている
この男を除いては
「おー、エース隊長じゃねぇか!随分と早いお帰りで」
「御託はいい。こりゃあ、一体どういうことだティーチ」
ケロリとした態度で、エースに話しかける男はティーチと言うらしかった
(エース……怒ってる…)
「聞いてくれエース隊長、コイツ怪しいもんを持ってだから他にもねェか、確かめてたんだよォ」
最もらしい理由をつけて、さっきとは打って変わった態度で言う。エースが隊長である以上、これはバレては厄介な問題…か。つくづく嫌な奴
こっちにもう、叫ぶ気力もないと知っての言葉か
……エースは仲間思いだから、信じてしまうかもしれない
「これも何かの武器かもしれねぇ」
『……ち、が……』
「えぇ?なんだって??」
『ち、が……う……かえ、せっ』
掠れた声では、屋根の上にいるエースに届かない
ティーチはわざとらしく耳を傾けて、私の声を拾う"フリ"をした
「こりゃあ、失礼した!違うなら持ち主に返さなくっちゃなァ、余程大事なものらしいし」
目の高さに掲げたペンダントを私の方に差し出す
「にしても綺麗な宝石だなァ、一体誰に貰ったんだ?」
ティーチの人差し指に掛けられて、ペンダントが左右に揺れる。
ニタニタした顔は、変わってない
……コイツ、何を考えて…
「こんなにいい宝石を贈くれるのは、金持ちの男ぐれェだろうよォ!エース隊長も、そう思うだろォ」
「……っ」
(……な、何を言って…!)
これはエースがくれたものなのに。
エース以外から、貰ったりしないのに
「そう、だな…ティーチ、早く返してやれ」
違う、違うのにエース…っ!
声のトーンで、エースが今どんな顔してるかすぐに分かった
ぎゅっと胸を掴まれるような痛み。殴られたところでも折れたところでもない、もっと内側の深いところがズクズクする
「ほら…よ」
『「!?」』