第4章 クジラの背中
朝、いつもの時間になってもチエは食堂に姿を現さなかった。
「あちゃちゃ…ちとやりすぎたか?」
黙々と朝食を口に運んでいると、カウンター越しにサッチが言う。俺は何も言ってないし、それらしい素振りも見せていない
それでも食べ続けていれば、上からもうひと声降ってくる
「何せエースが寝ねぇで食ってる」
おめぇも意外と心配性だな、と付け加えて。
酒のせいか、昨日はチエの様子がおかしかった。心配してないかと言われれば嘘になるが、俺が構えばチエの負担にもなりかねない
実際、俺が親父に頼み込んだおかげでチエは世話にもなりたくない海賊の元にいるわけで
それに加え、サッチたちにも俺とのことで弄られて、他のクルーからはあまりいい目では見られていない
俺が守ると言い切ってやることが出来なくて、こうやってうじうじ考えている自分が情けない、どうしようもない…
自分でも、らしくないと思っている
「そんなブルーなお前にはちと、申し訳ねーが仕事だ」
「…なんだよ」
「シマで無銭飲食と盗人やらかしたアホがいるらしい。」
「そんな仕事、もう俺じゃなくとも」
客分としていた頃とは違う。もう2番隊を背負う一隊長だ。部下の一人やふたり行かせれば済む話
「頼まれてくれよ」
しかしサッチは引き下がらなかった。何か理由があるのかと思い、渋々頷く
「ああ、あと帰りに医務室から包帯とガーゼ貰ってきてくれ。もう予備がねェんだ」
「わぁったよ…」
サッチがバチッとウィンクを決めれば、エースは頭に手をやりながら了承した