第4章 クジラの背中
隊長たちに背を押され、言われるがままにチエを担ぎ食堂を後にする。
あのままチエを潰しておく訳にも置かず、かと言って他の野郎に運ばせるのも癪だったので致し方なく、致し方な──っく運んでやる
言っておくが俺は潰れたやつを襲う趣味はねェ。
『んん…』
肩に担いだ分、随分と声が近く感じて、そのくぐもった声が身体に振動する
…………断じて、そんな趣味は…ねェ
「デュース、いるか……………」
「いいじゃなぁい、若先生ぇ」
「よ、よしてくれ」
チエを寝かせようと医務室の扉の前まで来てデュースの名を呼ぶ。しかし、何やらいつもとは違う医務室の雰囲気を感じ取って立ち止まった。
扉を開けることなく中の様子を察してしまったのだ
…アイツもここじゃ中々モテるらしい。
…………困った…。
「どうすりゃいいんだ」
デュースはナースに言い寄られて困っているのかもしれないが、このままチエをここに置くのも落ち着かない
眠るチエの傍で何やらやられても気分が良くねェし……でも医務室以外チエを置いておける場所はねェし……
ガシガシと空いた方の手で頭を搔く
思い浮かんだ最終手段にはあまりいい予感はしなかったが、致し方がない
「……怒んなよ」
意識がまたあるのかどうか、曖昧なチエにそう呟いて目的の場所に向かった