第4章 クジラの背中
「なァ、まだ飯はあるんだしお前達の昔の話を聞かせてくれよ」
テーブルが空いた皿の山でスペースがなくなってきた頃、休憩と言わんばかりにサッチが厨房から戻ってくる。
「俺も聞きたいな」
「気になることが山積みだよい」
「チエは昔からこんなに意地っ張りで大食いだったのか、とかな」
最後のイゾウの言葉に、エースとチエ以外が首を縦に振った
確かにテーブルの上の空き皿を見れば、とても男女二人で食べたとは思えない枚数。しかも、今のところ2人は同じくらいの量を既に食べているし、常人のを超えている
「チエはこんなに食ってねぇよ」
『お前とルフィが食い過ぎなんだ』
「ルフィって弟か」
きっとエースが一度は口にしたことがあるワードなのだろう。皆知っているようだった
「チエは兄弟じゃないのか?」
『ああ、私は盃を交わしていない。コイツらに止められてな』
コイツら、とはエースとサボのこと。顎で向かいのエースを指し、ジト目で見つめれば「なっ」っと短く反論の声を上げる
『ルフィは兄弟になろうって言ってくれたのにな』
「おまっ、それは…ッ!」
ダンっとテーブルに平手をついて、身を乗り出すエース。その頬は若干赤く焦りが丸見え
【お前ら知ってるか?盃を交わすと兄弟になれるんだ】
【へぇ、そうなんだ】
【チエ!!また勝手に着いてきたのかッ!】
【畑に向かう途中よ。】
山賊の家では自給自足。私が家事を補いエース達が食料を取ってくる。けれど肉ばかりでは栄養に悪いとマキノさんに教えて貰って、自分で畑を作っていた
そこへ向かう途中での出来事だった。
【なぁ、チエも兄弟になろう!!】
【おー、ルフィにしては悪くねェ提案だな】
【ばっ、バカ!!】
ギョッとした顔で引き止めたのはサボだった。エースだけをぐいっと引き寄せてけわしい顔で相談していたな。
【兄弟になったら、ケッコン出来ねェんだぞ!!!】
【そうなのか!?なら、絶対にダメだ!】
【そうだ!どっちが先にお嫁にするか勝負だからな!】
「「「…ははーん」」」
「なるほどね」
によによとエースに向けられた微笑。何かを察したのは隊長達だけで、当の本人は全く気づいていないようだった