第4章 クジラの背中
一緒に食べようってこういうこと?
エースと夕食の約束をして、特に待ち合わせ時間も決めずに解散した。そろそろかと思い、医務室を出れば食堂に向かう途中でハルタとイゾウに捕まった
「飯、一緒に食うんだろ」
「エースはもう来てるからさ。一緒に行こう」
言われるがままに着いていけば、本当にエースはもう食堂の丸丸テーブルの席に座っていて、その隣にはマルコの姿もあった
「お、来たな」
食堂に入ってきた3人にサッチが気づき、手招きする。片手に銀のトレーを抱えているところを見ると、食卓の料理を丁度運び終えたようだ
「今飲み物取ってくるからお前らも座れ座れ!」
流石台所を預かる4番隊隊長。誰もここではサッチに逆らう者はいない。チエも渋々席に着いた
そして冒頭に戻る
「エースから聞いてなかったのか?」
「皆で飯を食おうって言ってたんだよな」
「今任務で居ない隊長たちも今度一緒に食べよう!」
いつの間にか夕食を一緒に、という話はそこまで展開していた。本当にそうなのか。そうならそうと初めに言ってくれれば良かったものを…
正面でぐーすか眠るエースを睨みつけるが起きはしない
しばらくして、規則的に動いていた肩がビクリと一瞬跳ねてムクリと身を起こした
「んぁ…しまった、寝てた」
その顔に反省の色はない
…もういい。勝手に期待したのは私だけのようだし
「なんだよ、チエ。怒ってんのか?」
『別に、怒ってない』
フォークに香ばしく焼かれたブルストを刺したまま能天気に聞いてくる
チエはいつも通り鉄の仮面をつけて、冷静に対応しているのにどこか熱を感じる声
「エースが寝るからだろい」
「これぁ、むかひっからだ」
『汚い』
むしゃりむしゃりと頬張りながら答えるエースにピシャリとチエの声が制止する。
確かにその癖は昔からだし、私の不機嫌の原因はその事じゃない
ていうか、隠してるのにどうして分かるの
エースだけが気づいていて、周りの隊長たちは不思議そうな顔をして私を見る。どこからどう見ても、いつものチエだとサッチは言った