第4章 クジラの背中
「聞いたか野郎共!」
「おうよ!」
チエの案の定、入口付近で聞き耳を立てる隊長3人。デュースは盗み聞きする趣味はないと言って居なくなってしまった
「イゾウ隊長!マルコがまだ回復していませんっ」
小声ながら、元気よく手を挙げ進言したのはサッチ。その横でしゃがみ込んで顔を覆うのはこの船の一番隊隊長マルコ。
先程のチエの無意識の愛撫でかなりのダメージを負ったらしい
「情けねェな、マルコさんよ」
「黙れよい。あれは魔性の女だよい……」
マルコからみたチエは一体どんなだったのか、誰にもわからない
あの時、今まで見たことの無いくらい優しい笑みを浮かべながらふわりと触れたチエ。あのまま撫でられ続けたらマルコの動物としての本能が、服従という2文字で支配されていたことだろう
それが嫌だと思わなかった自分と、そう思わせるチエに畏怖していたのだった
「末恐ろしい娘だよい……」
「そんなにか。こりゃ益々株が上がるな」
エースに頭突きしたことと、親父を脅したことに加え、マルコを手のひらで転がしたとなればチエの伯が上がること間違いなしだ
「んで、どうするよ」
「そりゃ、邪魔するに決まってるだろ」
「そうとなれば、作戦開始だよい」
3人頭を突合せて、傾き始めた日と時間を確認しながら頷き合う
「マルコも参加するのか?」
「当たり前だよい。このまま引き下がれるか」
「一番隊隊長のプライドに火がついたな」
こりゃあ、面白くなるぜとイゾウがニタリと笑ってみせた。
『で、なんで貴方達がここに…?』
食卓を囲むのはチエとエースの2人……だけではなく、何人かの隊長たちも混じっていた
「2人きりの方が良かったかよい?」
『別に』
「なら問題ねェな」
「そうそう!みんなで食べた方がおいしいし!」
「チエの目当ては寝てるしな」
木製の丸デーブを6人で囲み、チエの両サイドをマルコとイゾウで固める完璧な陣形。そしてチエの向かい側にはお皿に突っ伏して眠るエースの姿
食堂に別々で向かっていた2人を、マルコ、イゾウ、ハルタで確保し連行してきたのだ