第4章 クジラの背中
みんなこちらを見て、私の返答を待っている
でもさすがにガルチューは……
『……ちょっと、触るだけ』
視線に耐え切れなくて、サッチから不死鳥の姿のマルコを受け取る
『わっ、あったかい』
思っていた以上にふわふわだ
もふもふしてて、すごく触り心地がいい
私に凭れ掛かるように、長い首が私の体の方に傾いて顔を肩口にポスと乗せた
正面から抱っこしているような体制になって、ぎゅ、と青い炎の体を軽く抱きしめる
『ありがとう、マルコ』
直ぐに体を離せばマルコも私の体から降りる。けれどその姿は変わらず不死鳥のまま
「?」
「どうした?戻んねーのか?」
「…………もうしばらくこのままの姿でいるよい」
そっぽ向いた小さな頭。人の姿でないからどんな表情か分からなかった
「…………」
そんなマルコを淡々と見つめるのはやはりイゾウだった。一体彼の目にはどんなふうに写っているのか、全て見抜かれているのか、不思議でならない。
「話、戻そうぜ」
「だな!チエはどんな子供だったんだ?」
イゾウの言葉でサッチが切り出す。結局このメンツで話すことに変わりはないのか
『別に、普通』
「連れねーな。てかマルコと態度違くない?オニーサン悲しい」
目元に袖を当てて大袈裟に泣くふりをしてみせる。というか自称お兄さんなんだ、オジサンじゃなくて。
「あっ、今絶対オジサンじゃないのかって思っただろ!」
『ああ』
「認めるのかよい!」
割と即答だったチエに、鳥の姿でマルコが大笑いする。デュースもイゾウも何だかすっかり会話の雰囲気に馴染んでしまった
『私は本当にどこにでも居るふつーの子供だったよ。山賊の元で小さい頃から育てられて、そこで暮らしてた』
私がダダンの元へ預けられたのは物心ついてしばらくだったあとのこと。
私の父親はとんでもなくダメな人だった。
酒に溺れ、ギャンブルに金を費やし、女に振られて帰ってくる。まだ年端もいかない子供がいるというのに昼間っから働きもせずに呑んだくれていた
私の父親は、元海賊
陸に降り立ち、二度と海に出られなくなったただの落ちぶれ海賊の船長だった