第4章 クジラの背中
それズルくないか?
そんな、ちょこんと乗られたら触りたくもな──…
「どうした?」
『や、なんでもないデス』
バチりと思いっきり鳥の彼と目が合う。もう既に羽に手を伸ばしつつあった私の手は行き場をなくして、宙に浮いている
隙を見せては行けないと警戒心が無意識に働く
「もしかして、動物が好きなのか」
そんなことお構い無しに見破ってくるのがこの男、ミスター色気のイゾウ
「触ってみればいいじゃねぇか!遠慮すんなって!」
『や、いいデス』
「なんでさっきから敬語なんだよい」
ダメだ、我慢我慢。
ガルチューなんてしない、絶対に。
でも……
キョトンと首を傾げる度にふわりと揺れる青い羽。ほんのり光る青がまた綺麗で炎と類似したそれに興味が湧く。
触ったら熱いのかな?
ふわふわしてそうだけど、実際どうなんだろ…
『って!ダメダメ…ガルチューだけは絶対に回避………』
「ガルチューって?」
デュースの低めの声でその単語が飛び出た瞬間チエは口を勢いよく覆った
不覚、無意識のうちに口に出てた、、
「確か、ミンク族の挨拶だよい」
「ああ、あのほっぺたくっつけるヤツか」
マルコとサッチがガルチューを理解している中でイゾウだけは、顎に手を当てて少し考え込む
「チエはゾウへ行ったことがあるのか?」
『ゾ、ゾウ?行ったことはないが』
ミンク族というのも初めて聞いた。そんな民族の挨拶だったなんて知らなかった
「え、じゃあ一体どうやってガルチューを知ったんだ?」
何気ないサッチの質問に答えようと口を開いたが、声になる前に閉じられた
『……父にしてもらった記憶があって。それだけ』
急に落ちたトーンと表情から、それはいい思い出ではなかったのかもしれない。
見つめた先は床でも、椅子の足でも明日でもなかった。紛れもない過去。チエは確かに過去を見ている
誰もそれ以上は聞かなかった。
「ガルチューするか?」
『へ?』
唐突に切り出したのはマルコの方だった
「温度の調節は出来るから、普通に触っても大丈夫だよい」
『え、でも…』
「マルコはあったけーぞ〜」
怖くない、と言い聞かせるようにサッチがマルコを抱き上げて笑ってみせた