第4章 クジラの背中
「なんで、って顔してるな」
『え』
そんなに顔に出したつもりはなかったんだが。
やはりどうしてかわかってしまうようだった
「お前らそっくりなんだよ」
『……?』
包帯を片手に、私の腕に落とされた視線はどこか遠くを見ているようだった。何かを思い出すような、そんな仕草
「アンタ、エースの幼馴染なんだってな。俺は初めエースの船に乗ってたんだ」
『えっ』
その驚きは隠すこともせずに簡単に口から飛び出した
「俺が出会った時まだアイツは1人で、エースにとって俺は多分最初の仲間だと思う。スペード海賊団は俺たちで作ったんだ」
話しながらも、その手はテキパキと動いていた。
デュースは、私の知らないエースを知る人。私にきっとエースのことを教えてくれる人
『…私とエースは、似てるのか?』
「ああ、そっくりさ。その無鉄砲なバカな所とかな」
あれは止めるのが大変なんだ、と心底嫌そうな顔して言う。一度言ったら聞かない、それはなんとなく頷けるかもしれないが、バカは余計だ
『……どんな旅だった?』
多分、彼でなければこんなことは聞かなかっただろう。
彼がエースのことを1番見てきた人だと思ったからだ。私が知っているエースを含めて、全部。
「そりゃあもう、壮絶さ。俺達は…いや、あいつは激動のスピードで駆け抜けていったよ。この海を」
まるで生き急いでいるみたいだった、と彼は言う。
『…私は、エースが島を出て間もなく海軍に入った。だからその間のことはよく知らないんだ。良かったら聞かせて欲しい』
ああ、と今度は優しい目で返してくれた。