第4章 クジラの背中
全く、どうして皆私とエースの関係に口出ししてくるのか。
この船の人達がエースのことをどう思ってるか、少し見ただけでだいぶ分かった。ちゃんと、大事な仲間として迎え入れられている
きっと茶化すためだけに私達を気にしている訳でもないんだと思う。
離れていた分、エースがどんな風にこの船に乗ることを決意したのか、今までどんな航海をしてきたのか…知ることはできないけれどきっと悪いものではなかったんだと思う
" あのエースなら、きっと…… "と私も、ルフィも…遠くへ行ってしまったサボもそう信じてる
けれど私は、強くないエースも知っているから、だから余計に……心配になる
例え今がいい環境であったとしても、だ。
…………エースが、海賊王の息子だから
『…そろそろいいかな』
ぐるぐる巻きにされた包帯を外して、傷を眺めた。刃を掠めた腕や足は何針か縫ったりもした。そうでない所はだいぶ跡が薄くなっいた
一番ひどいのは腹の傷で中の臓器も少しやられたそうだ。
折れた骨はまだ治るのに時間がかかる。
それでも私は海兵。鍛錬を怠る訳には行かない
「おいおい、勘弁してくれよ」
『あ』
立ち上がり部屋を出ようと扉に向かうその寸前で、私の脚は止められる。医者には見えないが、目元にマスクをつけて片手には医学書と思われる本。白衣に身を包んだこの船の若先生と呼ばれる人物
『デュース先生…』
「先生はよしてくれ。それよりまた無茶しようとしてたな?」
前にも1度彼に止められた。今日は部屋に籠っていると聞いたから出来ると思ったのに。
どうしてか、彼にはすぐバレる。
『無茶なんかしてない』
「怪我人は黙って大人しくしてろ」
『だから平気だと』
ビシ、と強烈なデコピンが額ではなく折れた肋骨の近くに炸裂する
『ッあ……!!!』
「ほらな」
声にならない叫び声を上げれば、直ぐにその仮面の下の瞳は呆れた色を増す
「包帯取り替えてやるから座れ」
『でも』
「まだ言うか」
もう一度デコピンの構を取られると、おとなしく座るしかない
どうしてか彼の言う事は聞いてしまうのだ。
まるで扱い慣れているように、簡単に配われてしまう