第4章 クジラの背中
「そっちの方が良い」
くしゃりとまだ包帯が取れたばかりの頭を乱雑に撫でる
『わ…っ、ちょっと』
ペースが乱される
こんな姿軍じゃ絶対に見せないのに。
「あいつのことなら心配ねェよい。あんなんでもちゃんとこの船の2番隊隊長だ。まだなったばかりけどな」
また二カリと、その気だるげな目を細めて笑う
『…別に、心配とかじゃなくて』
多分、1度崩されてしまったペースを戻すのが苦手なんだと思う。というか、乱されたことがなかったからどうすればいいのかわからない
普段ならこんなこと、口にしたりはしない
『ただ…ここは海賊船で、私は一応海兵だから敵なわけで…。なのに、エースが私を庇ったりするから、……これ以上、迷惑かけたくないだけ』
ぽつり、ぽつりと吐き出したのは、誰にも言わずに1人で背負い込んでいたもの。
エースがこの船で上手くやっているなら邪魔したくない
「あいつはきっと、迷惑なんてこれっぽっちも思ってねェよい。バカだからな」
『それは…言えてる』
思わぬ同意にマルコは吹き出して「だろい?」と笑いかける
『…マルコ、さんはどうして私に笑ってくれるの…?』
正直言って私達は赤の他人だし、それ以上に敵同士なのに
何ともないように話してくれて、私にちょっかいを出す部下がいれば叱ってくれる
「それは……」
どうしてそこまで、私に構ってくれるのか、単純な疑問だった
「お前が良い奴だからよい」
……?
私、何かした?
クエスチョンマークが思いっきり顔に出ていたと思う。それを察してちゃんと説明してくれた
「お前は、俺達の大事な仲間を大事に思ってくれてる。それだけで十分なんだよい!」
じわりと胸の奥に熱が滲み出す。温かい感覚
嬉しい、な。エースにこんな仲間ができて…
そして羨ましい。こんな人が仲間で。
『…そっか。』
緩んだ口元を隠すようにオレンジジュースの瓶を傾けた
『マルコさん、また私の話聞いてくれるかな』
「いつでも来い。あとマルコでいいよい」
また髪をぐしゃぐしゃに撫でられたけれど、今度は悪くないと思えた。