第4章 クジラの背中
二人の息が切れた頃、ずっと待っていたように気まづそうな顔でノックをした者がいた
「エース、ちょっといいかよい。あと、あんたも」
肩で息をしながらも、睨み合った2人の視線は中々切れることは無く、少し間を置いてようやくその声の主を見た。
「なんだよ、マルコ」
機嫌が悪いのが丸出しで、チエの方も同じような顔をしていた。
「マルコ隊長、彼女まだ目覚めたばかりで…」
『いい。歩ける』
ナースを制して、点滴やら何やらを外す。元々繋がれているのは好きじゃないし、なければ死ぬという訳でもないだろう。
ベットの手すりに手を置き、足を床につけて立ち上がる。
エースに振り回されたおかげで、少しは痛みに慣れてきた
マルコと呼ばれる男、この船の1番隊隊長不死鳥マルコの後に続いてエース、その後ろをチエが歩いていった
その奇妙な光景を目線だけで皆追う
この間まで手配書に名を連ねていた海賊や、数年前突然姿を消した賞金首らがいた。記憶している範囲で確認できただけでも、30人はいる。海賊で言うなら2つだ
エースの率いていたスペード海賊団もそのひとつ
「親父、連れてきたよい」
目の前に座すのは、この船の船長であり世界最強の男
「…グラララ…俺の覇気にまともに立ってられるかァ」
その貫禄ある姿に、ゴクリと生唾を飲み込んだ
『白ひげ海賊団船長、エドワード・ニューゲート……』
私に向けられた目は、鋭く突き刺さる。じいさんとの訓練よりもキツイ、、
これが、本気の覇気…!!
「生意気な目ェしやがる。名乗れ生娘」
『生娘じゃない、チエ・ルノウェだ』
気を緩めたら、足がすくんでしまいそう
捕まるものがあってよかった
『私をどうするつもりだ。このまま海に投げ出すか?』
強気の姿勢を目で訴える。私は屈しない、、
「お前ェが無様に溺れるのを見るのも悪かねェな」
「親父っ!!」
身を乗り出したのはエースだった。それを目の端で確認して、私は1歩踏み出した
『アンタは私を殺せない』
皆ぎょっとした。虚仮威しだと笑うものもいれば、ただ静かに見つめるもの、狼狽えるもの…一気に船の中に異様な雰囲気が漂う。