第4章 クジラの背中
初対面にも関わらずこんなにズケズケ言うものなのか、と反論してやろうと思った時
「んがっ」
ビクッと肩を跳ね上がらせて、息が詰まる音を立てた
私たち二人の視線はそいつに集中する
「………んー」
重たそうに瞼を持ち上げ、向くりと起き上がる。
髪をわしゃわしゃとかきあげて、何度か瞬きをしたあとでようやく私のことを、その目に映した
虚ろな目がどんどん開かれていって、しだいに私の鼓動も比例して大きくなってきた
「チエ!!」
目を見開いて、私の肩を強く掴む。
前のめりになってずいっとこちらに近づくと、勢いのあまり椅子が派手に倒れる
「痛いところは!?腹は減ってねェか!?」
肩を力強く掴んだかと思うと、前後にガクンガクン降り出した
当然、全身に裂けるような激痛が駆け巡った
『いあああああっ、!!!』
「やめなさいっ!」
私の激昴とナースの拳骨を食らったのは言うまでもない
叫ばずにはいられないほど、こんなに大怪我するのは初めてだったし
それに今は馬鹿にする奴も弱みを握ろうとする奴もいない
『…ーっ、、』
痛みに悶えていると、エースが申し訳なさそうに謝ってきた
「わ、わりィ」
『……私に構うな。』
私は海兵で、エースを捕まえるためにここに来た。その為だけにここにいる
これ以上情けをかけてもらうつもりもない
「…構うなって…なんだよ、それ。知らない間に海兵なんかになりやがって」
『海兵なんかって何?別にエースに関係ないでしょ』
本当は関係しているが、エースがそんな細かいこと気づくわけがない。
大体、知らない間にってエースが海に出たあとなんだから、知らないのは当たり前だ。
そもそも知っていたら、一緒に連れていってくれたのか
「こっちは心配して言ってんだぞ!」
『余計なお世話よ!私が海兵になろうと、海賊になろうと私の勝手!私の自由!』
エースが海に出るのだって、誰にも許可取ってないだろうが。
だったら私が何をしようが、誰も文句なんて言えやしない
「おまっ、ちゃんと分かってやってんのか!?」
『エースが海賊で、私が海軍、お互い敵同士ってことでしょ。こっちは最初から捕まえる気で来たんだからね』
この船にいるエースの立場を本人が1番理解していないやじゃないだろうか