第4章 クジラの背中
俺に頭突きして、押さえつけられてもあんなにもがく必死な姿を初めて見たかもしれない。
俺やルフィのことを心配して、いつも涙目になりながら仁王立ちで玄関で待っていて
ボロボロになったルフィを連れて帰れば、いつも「遅い!心配したっ!!」って怒鳴りながら俺たち2人に抱きついてくる
俺に、無事でよかったと泣きながら言ったあの姿は、昔を思い出させた。
姿は変わっても、チエの本質はあのままなのかもしれない…
「っ!」
急に、チエの体が跳ね上がったかと思うと、チエと繋がった機会からピピピッっと電子音が忙しなく鳴り出す
「お、おいっ、チエ!チエ!!」
直ぐにドクターやナース達が駆けつけてきて、声を荒らげて手を尽くす。
「チエ!しっかりしろ、チエ!」
依然鳴り止まない機械の音と、周りの様子でチエが危ないことは直ぐに理解した
いくら叫んでも、手を強く握ってもチエの呼吸は浅くなり、首を振ってもがいていたのも、だんだん弱くなる
「チエ!……行くなっ、チエ!!!」
俺の叫び声の後に間髪入れずに、ピピッと再び電子音が鳴った。しかし先程よりもテンポが心做しかおそくなった
「先生、脈拍安定してきました!」
「呼吸も元に戻りつつあります!酸素量戻しますか」
「血圧測ります!」
俺の叫びが届いたのか、船医の処方が良かったのかは知らないが、一難超えたようだった。
それでもナース達が忙しなく動くのは変わらなかったが、チエの苦しそうな顔がほんの少し緩んだのを見て俺も、安心してしまった
「大丈夫、なのか……?」
近くにいたナースに恐る恐る尋ねてみる
自分でもこんなに狼狽えた声を聞くのは、随分と久々な気がした
「ええ、一時はどうなるかと思ったけど何とか。けどまだ何があるかわからないわ。一緒にいてあげて」
その言葉にただ一つ、力強く頷いてみせた