第3章 risk or safe
マルコが捕まえた海兵の周りにらギャラリーがわらわらと集まってくる
『がはっ、ゲホッゲホッ…』
何度も体を叩きつけられて、咳をしても真っ赤な液体しか出てこない
結んでいた髪もほどけて、ぼさぼさになる
ロープで大人しく拘束されているチエにはもう、意識を保つことしか出来なかった
そんな時、アイツがその輪の中に入ってきた
「なんだなんだ、サルでも拾ったか?」
『えー、す……』
長い髪の隙間から、死にかけの瞳がエースを射抜いた
「……チエ?チエなのか…?」
まだ食べかけのパンや肉が乗った皿を落としてまで、走り寄った
チエの肩を掴み、どうしてここにいるのかと問い詰めた
「おい、この怪我!しかもなんで海軍なんか!」
『…こんの……』
口の中が血の味でいっぱいだった。
喉も切れて、息をするだけで痛くて。
それでも掠れながら絞り出した声を目の前のエースだけじゃなく、ギャラリーもが拾おうとしていた
なにせ海軍がエースの知り合いなんだから
『こんの、バカエースッ!!!!』
「ぐぁっ!!」
出せるだけの声を張り上げて、もうない力を振り絞り、動かない身体を全力で突き動かす
「こいつ!エースに頭突きしたぞ!!」
「ロギアに頭突きしやがった…」
周りが騒然とするなか、頭突きされた本人が1番驚いていた
「とにかく抑えろよい!」
マルコに言われて、何人かがチエの肩を抑えるがチエはエースに向かって身を乗り出し、何かを叫ぼうと口を開くが、やめた
『無事で…よかった……』
閉じた口は、掠れ声を零して歪んだ。目には抑えきれない雫を溜めて。
そのままチエはするりと腕から抜け、デッキに体が吸い込まれるようにして倒れた。
びだんっと血を広げながらまた叩きつけられた。
押さえていた何人かも、唖然としてしまい、誰も倒れていく彼女の身体を支えるものはいなかった
「一体、何の騒ぎだ」
大きな影を落としたのは、この船の船長白ひげだった。
「親父!頼む、こいつを助けてくれ!!……大事なやつなんだ」
マルコよりも、誰よりも先にエースが叫んだ