第3章 risk or safe
腕に力を入れ、足を動かす
エースたちの去っていった方向に向かって必死に進もうとする
『も、……おいて、いくな…っ』
力を入れた箇所から血が吹き出すが、チエそこにはないエースの背中を追っていた
彼女にしか見えない、彼の姿。
もう船は進み始めていた
『にが、さない……っ!』
しかしそこで諦めるチエではなかった
立ち上がり、大きな船目掛けて崖から飛び降りた
「少佐!!」
「チエ!!!」
背中に部下やスモーカー大佐の声が投げかけられるが、チエの目には船の後方デッキの床しか見えていなかった
( 届け……っ!! )
目指していた場所よりも少し後ろ
本当にあと一歩で遅れていたら、海に落ちていた。それくらいギリギリの場所に叩きつけられた。
ナイフや剣で深く切り裂かれた皮膚では、あの高さからの着地は出来まい。
それでもチエはまだ、進むことをやめなかった
もう自分の正体を隠す帽子さでさえ飛んでしまったというのに、彼女は前に進むことをやめなかった。
必死に床にへばりついて、腕を前に伸ばし、体をそこまで引っ張りあげる。ほふく前進した後には彼女の血がベッタリこびり付いた
最初に気がついたのは、この船の1番隊隊長不死鳥マルコだった。
海軍に追跡されていないか、不死鳥の姿になり上空を見回っていた。皆は中央デッキに集まって昼飯にしているところだ
「ん?なんだよい、あれ」
見回りを終え、戻ろうとした矢先、視界の端に映ったのは後方デッキから伸びる赤い線
一体誰のイタズラだと思い近づけば、その先頭にいるのが人だと気づく
しかもその背中には、大きく書かれた正義の2文字。
「しまった...っ!」
すぐさま急降下したマルコは、足でその海兵の肩を捕まえ、もう一度浮上する
「おい、お前ら!そこどけよい!」
上から降ってくるマルコの声に、なんだなんだとなりながらも、スペースを空ける。
そこにドサリと落とし、次に人型に戻ったマルコが着地した