第3章 risk or safe
その悲痛な叫びは、沈黙を呼び寄せるだけだった
この船には、家族や仲間を海軍に奪われた者もいる。簡単に海兵を救うことなどできない
この船の仲間が家族同然のように大事であり、その安全を守ることが船長の役目。
しかしエースにとっては、仲間と同じくらいもしくはそれ以上に、目の前の血まみれのガキが大事である。
「親父……頼む、」
エースが、床に頭をつけた
周りはそれを見てギョッとする。そこまで…、とエースの熱意に押される者もいた。皆にとってエースも大事だからだ。
「………今すぐ医務室に運べ」
「親父!」
「いいののかよい!、親父!!」
皆の不安の声を片手で制して、言った。
「俺は息子のお前達が大事にしてるモンを、大事にしてェだけだ。」
「親父……!恩に着る!」
そう言ってエースはチエを抱き抱え、医務室に走った。
まだ納得していない者達は、視線を斜め下に落とし、拳を握る。理解しようとしてもなかなか心の中で折り合いがつけれない者達もいて当然だ。
「テメェらが海軍にされてきたことはわかる。俺も海軍は大っ嫌いだ。だが、あの小娘がお前らにしたわけじゃねェ…。野暮なことはしてやるな」
白ひげの言葉に、皆それぞれ散っていった
「良かったのかよい、親父」
1人残ったマルコは白ひげに近づき、そう問う。
「もしもの時は、おめぇや息子共がいるから大丈夫だろ」
白ひげはいつもの席に、どかっと座りマルコはその正面に立った
「全く、頼もしいよい…」
「ちったァ年寄りに楽させろ」
ぐびぐびと、マルコの身長ほどある瓶から直接酒を飲み干す
「よく言うぜ…世界最強の男がよい」
「うるせぇ」
太陽が沈み始めた頃、長い一日が終えようとしていた。