第8章 Pandora
エースはしばらく床板を見つめていたが、帽子を深く被り直して赤髪を見つめた。彼の表情は落ち着きを取り戻していた。
「それで、島に入るための鍵って?」
シャンクスは僅かに口角を上げた。以前に会った時とは違う、彼の成長ぶりに思わず口角が上がったのだ
「鍵はその一族だけが持っている。だから一族以外の人間は、彼らと一緒に島に入るか、内側から開けてもらわないと入れない」
その島は大きな柵や門で囲われているのだろうかとエースは思った。大抵の障害物なら乗り越える自信はある。
「そもそもその島は霧に隠されていて、普通は見つけることが出来ない」
普通の人がその霧に遭遇することすらない。幻の島なのだと言う。それじゃあどうやってその島を見つけるというのだろう
「だがビブルカードがあれば話は別だ。」
「そうなのか?でもさっき…」
ビブルカードだけでは入ることは出来ないと言っていた。鍵を持たない以上、入るには内側から開けてもらわなければならないとも。
「ビブルカードで位置が分かれば、霧の中に入れる。ログポースではそこは示されないからな」
ログが狂うんだ、とシャンクスは付け加えた。まずは島を隠す霧を見つけなければならないということらしい。
「それで、鍵を開けるにはどうするんだよ」
「それには心配及ばない」
シャンクスはニヤリと笑った。そして、エースからビブルカードを受け取り、声を張って指揮した。
雄叫びと共に船は帆を張り、風に乗って前へと押し進む
「心配するな。必ず辿り着いてみせる」
シャンクスの言葉には重みがあった。覚悟と確信のある眼差しに、エースの不安も薄れていた。
「恩に着る。赤髪」
エースはシャンクスが仲間たちに指揮する中、その背中に向かって頭を下げた。
その自由に跳ねる髪を懐かしそうに見つめながら、エースの頭を強く撫でながら言った
「気にするな。俺はただチエ を口説きに行くだけだ」
「んなっ!」
思わぬ発言に頭をあげようとするが、上から押さえつけられて変につっかえる。それを見てシャンクスはゲラゲラと笑っていた
「若いのを揶揄うんじゃねェ」
ベックマンが助け舟を出してくれるが、先程の言葉を撤回する素振りも、冗談だとフォローする素振りもない。
(極力チエ と赤髪を会わせないようにしよう……)