第8章 Pandora
「ま、待ってくれ。チエ はなんでそんな所にいンだ」
まだこの海には知らないことだらけで、自分の知らないそんな島が存在することは理解ができる。だけど、なんでチエ はそんなところに行って命の危機が迫ってるんだ
白ひげの船にいたから、何らかの処罰か疑いをかけられたのだとばかり思っていたが、赤髪の話はどうやらその類のものじゃない
「それは本人から聞いた方がいいだろう。英雄ガープでもどうにもならないということは、軍絡みだな。」
シャンクスは胡座をかいた両膝に自分の両腕を置いて、視線を低くした。その目は鋭く、エースですら背筋に何かが走るのがわかった
「海軍は、いや、政府はチエ の持つ力を利用しようとしている。あの子は特別な力を持った一族の末裔なんだ」
「特別な、力…?」
エースは信じられないような顔をして、唖然とした。自分の中のチエ は、優しくて芯があって、でも力は自分たちの方が上で、俺が守ると決めた相手だ。それ以上も以下もないと思ってた
「なんだよ、それ…。17年間、そんなの1度も」
「覚えがないか?」
「っ、」
エースにも覚えがないわけではなかった。
ヘイブンと対峙した時に見せた、異常な現象。それがチエ のもつ「特別な力」なのだとしたら……
「だけど…っ、なんだって今になってそんな……」
そんな力を持っていたのなら、なんで隠してた。もしかして、ずっと1人で抱え込んでいたのだろうか
「俺が知る限りでは、力の発現は自分の命の危機を感じた時だ。そうでない限り、必要のない力だからだ」
それは、傷が治ったり、電撃を放ったりすることなんだろうか。確かに、コルボ山での生活は命の危険なんてなかったし、特にチエ はそういった場面に遭遇することは無かった
(海軍になって、俺を追いかけたから……)
ぽつんと浮き上がった、責念にも似た思いがエースの胸に霧をかける。自分を追って海に出て、危険な目にあったせいで力を発現したのなら、その原因は…きっと俺だ