第8章 Pandora
【チエも一緒に来るか?】
【え?】
【この辺の島をぐるっと一周してくるだけだ】
な、と笑顔を向けるが、チエ は困惑した様子で口を噤んでしまった。困らせるつもりは無かったのだが、人見知りしているのだろうか。
椅子へ下ろそうとした時、彼女はシャツを掴んで言った
【少し、だけなら】
【シャンクス!どーしてその子を抱えていくのよ!】
酒場から船までチエ を抱えたまま行くと、ウタが足元でずっと文句を言っていた。ルフィは船に乗れるとわかり、すっかり機嫌を良くしている
【なんだヤキモチか。】
【ちーがーうっ!】
【ウタはガキだな】
【ガキなのはその子でしょ!】
ビシッと下から指を刺されると、チエ は視線を逸らし、俺の影に隠れた。ウタとは同い年くらいで仲良くして欲しいんだがな。
【お前たち、落ち着かないか。ほら、船を出すぞ】
【うぉー!出航だぁー!!!】
ルフィは船長よりも大きな声で叫び、両手を空いっぱいに広げる
【海…!】
チエ はぱあっと顔を明るくして、抱き抱えた腕から身を乗り出した
下ろしてやると、船縁に駆け寄って、海をのぞき込む。
【アンタ海もまともに見た事ないわけ?】
【うん、こんなに近くで見るのは初めて…!】
ウタは意地悪のつもりで言ったのだろうが、チエ があまりに素直に返すので狼狽えていた。
【チエ はフーシャ村の子じゃないのか?】
【おれもお前と会うの初めてだ】
フーシャ村に住んでいれば、海は珍しくもないだろうし、村に住むルフィが初めて会うというのだから別の地域の子供なのだろうか
【私、山賊のとこの子】
【山賊ぅ!?】
ルフィはつい最近山賊と出会って、それから山賊にいい記憶がないらしい
【お前あの嫌な奴のどこに住んでんのかァ!?】
するとチエ はムッとした様な表情で言った。
【ダダンは嫌な奴じゃない…!とっても優しいよ】
【【ダダン?】】
ルフィとウタの声が重なった。チエ の山賊と食い違っていると気づいたのだろう。「お前はいい山賊のとこの子か」と納得していた
その後なんだかんだ言いつつも、ルフィの我儘に振り回され、ウタの歌を聞き、チエ の人見知りはすっかり無くなっていた。