第8章 Pandora
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一方その頃、別の海では
「くそ、……腹、へった」
チエを追って船を飛び出したエースが、海の真ん中で倒れていた。
1人分しかスペースのないストライカーで、顔から突っ伏し轟音を轟かせていた。勢いで出てきたおかげで、進路も食料も運任せ。最初の1週間はひたすらストライカーを走らせたが、チエ のビブルカードは止まりはしなかった。
エースは何の準備もしていなかったことを今更ながら後悔していた。
ぶっ通しで炎を出力し、飲まず食わずで1週間以上経過している。加えてこの海は真夏の海域。いくら海の上と言っても降り注ぐ日差しは炎天下の砂漠にも匹敵する。
彼は本気で自分の身の危険を感じていた
幾度となく危機を乗り越えてきたが、このままでは本当に危ない。
だがどこか島を探している余裕もない。
このペースで進んでも、まだチエ の元へはたどり着けていないのだ。その間にもしチエ が命を落としたら……
そう考えるだけで、しばらくは炎が出る気がした。
目眩がするなか立ち上がり、足に炎の出力を集中させる
ボボッと燃料不足のストーブのように不規則な炎が足元を覆った
今のエースの気力は細い蜘蛛の糸で繋がれている。でもそれは決して簡単に切れるものではなく、鋼で出来た強固な糸であった。
何度視界が歪み、ふらつこうと彼は炎を出すのを止めなかった。
(早く、、早く、アイツの所へいかねェと……!!!!)
彼の中にある焦りと、チエへの想いがただひたすらに彼の意識を途切れさずにいた。
未だ島も、船も見えはしない。
海がこんなにも広いことを、こうも嫌に実感するとは思いもしなかった。
そうして走り続けて、2週間と少したった頃、唯一繋いでいた糸が切れ、海上のど真ん中で彼は意識を手放した